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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 白黒人間。 ( No.2 )
- 日時: 2011/02/19 22:15
- 名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: VmnQ.FWP)
一話【ドリームワールド】
彼の生活はつまらない。
午前六時、起床。午前六時半、朝食。午前七時、外へ出かける準備。午前七時四十分、自室に籠る。午前九時、家を出る。午前十時、店に着く。それから九時間程の間、接客業。ただしその内の二時間は休憩時間だ。そして午後八時二十分、帰宅。午後九時、テレビに顔を向けながら夕飯を食べる。午後十時、食器洗いから風呂、歯磨きなどの就寝準備。その後は自室に籠る。午後一時に、就寝。
ありきたりな生活を、毎日機械的に繰り返す。そんな苦しい現実の中、彼はしぶとく生きていた。
「お、手紙」
彼は、自身の家にあるポストに手を伸ばし、その感触を確かめる。
その感触が分かると、彼は顔を緩める。期待と不安が交ざるような、曖昧な、笑み。
そしてドアノブに手をかけ、いつも通りの帰宅。変わった所と言えば、右手に手紙がある事と、帰宅時間がいつもより早い位だ。
今日はシフトが変更したので午後六時に帰宅する事になった訳だ。
そして、彼はリビングにあるソファにもたれかかり、届いた手紙を開ける。紙の断末魔が静寂を破る。一枚の紙を見る彼は、顔を曇らせた。
「またかー……」
クッションに顔を埋めて、足をばたつかせる。新記録達成。だが新記録に良い意味なんて一つもない。むしろ、悪い意味しかない。
少しの間、沈黙だけが部屋を埋める。彼は立ち上がり、夕食の準備をしようと、台所へ向かう。だがその背中と顔はとても暗い。
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