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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 白黒人間。 ( No.23 )
- 日時: 2011/03/09 21:51
- 名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: j553wc0m)
「でぃーちゃんでぃーちゃんでぃーちゃんッ!」
「どうしたの? そんなに慌てて」
ヴィーナスの慌てた様な声と、アフロディーテの穏やかな声がいつもの朝を彩る。
落ち着いてアフロディーテがヴィーナスに訊くと、ヴィーナスは真っ青な顔で、言葉を出した。
「優が、居ないの」
痛い視線に歓迎された彼、田原優がこの村に来たのは、一週間前。村の少女、ヴィーナスがまた田原優を連れて来た訳である。そして、消えたのは二回目。喧嘩したあの日と違って、唐突に、静かに彼は消えた。
田原優が居ない間の村は、とても活発な村になっていた。只二人を除いては。無論、アフロディーテとヴィーナスである。他の村人はまるで田原優に投げた嫌味な視線が嘘の様に穏やかだった。
「また……どこに行ったんだろうね」
窓辺で、心配そうに空を見るヴィーナス。
「ヴィーナス、落ち着かないわね」
落ち着いた口調でアフロディーテが編み物を編む。器用に手を動かしながらヴィーナスと会話を始めるアフロディーテ。
「……私はいつでも落ち着いてるわよ」
「嘘。いつもより悲しそう。好きなのは分かるけど村の皆に敵対心向けられても困るわよ?」
ぶっきらぼうにそう言い放つヴィーナスに、力強く言葉を向けるアフロディーテ。
その言葉の後に少しの沈黙が続き、空気が少し悪くなる。
そんな時に、『彼』はフラフラとこの村に訪れてきた。
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