ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 白黒人間。 ( No.3 )
日時: 2011/02/19 22:16
名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: VmnQ.FWP)

 そんな彼のつまらない生活が、どうしてこんなに楽しい生活になったのか。
——その理由は、彼の特殊能力にあった。

 「ゆーうー! ちょっと手伝って!」

幻想的な紫の長い髪を金色の髪留めで下に縛り、夜空色の瞳が特徴的な彼女。背中に黄緑の、有色透明な羽があるのも特徴的だが……この村人達にとっては特徴どころか当たり前の事である。
 田原優。紫髪の彼女が優と呼んだその青年は、——最近、行方不明で有名になっている小説家志望の青年である。
彼の背中には、羽もなければどこか特殊という訳でもない。黒髪黒目、少し背が高く、中性的な顔立ちの青年。特徴と言える場所は、体の半分以上を黒い洋服で纏っているぐらいだ。
別に、黒が好きである人ぐらいこの世には千万何万ぐらいいるから特徴でもないのだが。
 閑話休題。
 彼は今行方不明となっているのだが、何故こんな場所に居るのかと言うと。
 彼が絶望に立った夜、本が白光した。気持ち悪い意味ではない。
その光はやがて消え去ったのだが、目を開いても閉じてもその空間に田原優は見えない。
田原優の部屋には居ない田原優が、この村にいきなり来た……と言うか、村の真ん中で眠っていた。外で居るのにも関わらず、彼はしっかり眠っていた。
 村人は、その田原優の姿を見て警戒と驚きを隠せなかった。驚きは行方不明の人、という理由では無く、単に変な外見と格好だったから。警戒も前の理由と同じく。
 田原優は村人から警戒されていたのだが、紫髪の彼女が田原優を助け舟に乗せたおかげで最近は打ち解けて来ている。だがまあ一部の人はまだ警戒している様なので、時々突き刺さる様な視線が向けられている。

 そんな視線に気付かないフリをして、彼は淡々と紫髪の彼女を手伝う。
これが落ちこぼれの彼が生み出した嫌がらせからの回避方法だ。