ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 白黒人間。 ( No.8 )
日時: 2011/02/19 22:19
名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: VmnQ.FWP)

 彼は、フラフラと、フラフラと。
酒に酔った中年男性を思い浮かべる千鳥足で、森のある方向へ足を動かす。
 森に足を踏み入れ、上を見上げる。自分よりずっと高い樹の天辺を田原優は見て、また、顔を足に向けた。俯いたまま、また彼は歩き出す。

 黙々と歩いていく内に、森が顔を見せる。
 光る湖や、小さな動物。その暗い森には、明るく、微笑ましい景色が広がっていた。深緑の葉が、風に揺れる。だが、それも束の間。
あっと言う間に日は沈み、暗い森が何も見えない程暗くなったのはすぐの事だった。
 何も見えない森の中、適当に足を動かす。気分も重くなり、昼になかった筈の空腹もやってき、田原優の体力は、限界状態である。
 その刹那。
——白く、まばゆい光。
いつかの物語の時の様なその光は、すぐに収まり、その光の代わりに居たのは、一羽の梟。
田原優は、驚いて目を開く。だが、その梟を見て溜息を一つ吐き出し、方向を変えて歩き出そうと一歩踏み出す。

 「待て待て、少しくらい話を聞け」

梟は、人間の言葉を喋り出した。