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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 戦國Love story ( No.4 )
- 日時: 2011/02/08 21:23
- 名前: 陰魔羅鬼 ◆ohBawF8LBM (ID: gwrG8cb2)
身体に大きすぎるほどの白い布を巻きつけて、私は長篠へやってきた。
その布に、長篠の地形を余す所なく書き写してしまう。
信長様はその日の決戦の為、新兵器の鉄砲と言う物を3000丁も用意なさっている。
信長様の心意気を見て、皆の士気が上がっている。この戦は負けるわけにはいかない。
そして、何も見逃すこと無く長篠の地形を布に書き込む。目で見たままに、正確に。
長居は無用。様が終わればすぐに尾張へ走る。信長様が待っていらっしゃる城へ。
「信長様」
帰ってきて、私はまず信長様の自室へ向かう。信長様は書き物をしていた手を止め、私の方を向く。
「帰ってきたか。早かったな」
どれだけ早く走っても、どれだけこき使っても全く疲れの色は見せない。だが、それが逆に心配にもなる。
「はい。早くお伝えしたくて……」
身体に巻きつけた地形の書かれた布を解けば、私の身を覆うものは薄い布一枚になってしまう。
しかし、そんなこと気にも留めない。女としての自分は捨てた。乱世に生きる武将として、私は生きる。
「ほう……」
精巧にできた地図。どこに布陣するかはだいたい決めていたが、これを見て確信を持てた。
「長篠城手前の設楽原に布陣する」
原と言えど、川に沿って丘陵地が幾つも連なる場所であり、相手陣の深遠を見渡せる視界の良い場所ではない。
「信長様……」
その布陣にはつい口出ししてしまった。決して有利とは言えない地に布陣すると、信長様は仰る。
「我を信じよ」
その短い言葉が、ただ心の支えになってくれる……。
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