ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: A R C A N A ( No.1 )
- 日時: 2011/02/09 21:01
- 名前: 鷹の目 (ID: BZFXj35Y)
【1.痣】
耳をつんざくような目覚ましの音で、1人の青年はベットから起き上がった。
ベット、勉強机、青い絨毯が敷かれた床の上には無造作に学校の鞄が置かれていた。プリントも散らばっている。
「ねむ………………」
クシャクシャの髪を掻き毟り、青年はあくびと背伸びを一緒にしながらダルそうに立ち上がった。
カーテンを開けると、朝日が暗かった部屋を照らす。青年は再び背伸びをすると、自身の部屋から出た。
「お兄ちゃん、学校遅れちゃうよ。」
青年が階段を降りて1階に向かう途中、すれ違い際に妹が青年の顔を見ながら言った。
「あぁ………分かってるよ。」
青年は1階のリビングに入り、椅子に座るとテーブルの上に用意されてあるジャムの塗られた食パンと牛乳を見る。
「またこの献立かよ………バリエーションが少ないな……………」
「文句言わないでよ、私は先に行くよ。バイバイ、春お兄ちゃん。」
白宮 春 17歳 高校2年生_______
中学2年生の妹である奈々は、笑顔で春に手を振ると家を出ていった。
春は食パンをかじり、牛乳の入ったコップを手に取り2階の自室へと戻る。
その間に食パンは食べ終わり、牛乳を一気に飲み干すと部屋に入って床に置いてある鞄を持ちあげた。
「今日は………理科AにOR………数学Bもあるのかよ…………」
春は勉強机の上に置いてある時間割を見ながら、ブツブツと呟いて教材を鞄へと押し込む。
「ん…………?」
鞄に教科書やノートを詰め込んでいる時、春は自身の腕に違和感を感じた。なぜか、右腕の中央に熱さを感じる。
パジャマを脱いで確認すると、右腕には見たことのない様な赤色の痣ができていた。しかも、何かの文字に見える。
「なんだこれ………#……………R?」
━#R━
春の右腕には、赤い痣の様な形で浮き出ていた。試しに触ってみると、ズキズキとした痛みに襲われた。
「痛って!!!くそっ………奇病か?」
春は表情を歪め、机の横にある棚から湿布を取り出して痣の上に張った。
「治ってくれよ………ま、シップ貼っとけば大丈夫だろ。」
春は腕に湿布を貼り、制服に着替え始める。その間、くだらない事ばかり考えていた。
あの子来るかなぁ〜
帰ったら何しよ………
そういや、今週あのドラマ最期かぁ
制服に着替え終わると鞄を持って1階へと降りる。玄関に行く前に、玄関の手前の部屋に入った。
部屋の中は畳の床に、奥には豪華な仏壇と供えられた写真や果物、そして、笑顔で写る男女2人の写真。
春は仏壇の前に座ると、合掌して目を閉じる。
「親父、母さん。行ってきます。」
春は目を開けて微笑みながら写真を見ると立ち上がる。
そして、玄関へと向かい家から元気よく飛び出した。
春はこの時思っていた。いや、当然だと思い込んでいた。
これからも平和な日常が続くのだと。
だが、それは全て違う。
これから春は、想像を絶する人生を送ることになる。
無論、そんなことを春は想像も考えもしてなかった_______