ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: A R C A N A ( No.2 )
- 日時: 2011/02/09 22:00
- 名前: 鷹の目 (ID: BZFXj35Y)
【2.覚醒】
自宅から15分歩いた所に、春の通う楠木学園高等学校はある。私立だけに校舎は綺麗で設備も整っている。
クーラー暖房完備、窓は対不審者用に防弾ガラス。恐らく、ここ東京では一番豪華な高校である。
「コ」の字型の校舎は5階建て、エレベーターも設置されている。しかし、校則により生徒は使用できない。
春は自身の教室2−10組がある3階に着くと、後ろのドアから教室に入った。
「あっ………白宮君、お、お、お早う…………」
後ろのドアの付近に座る、眼鏡をかけた微妙な女子生徒が春に声をかけてきた。
「…?お早う。」
春はあまり話したことのない女子生徒に話しかけられ、一瞬驚くが一応挨拶を交わす。
一番後ろの窓側の席が、春の席であり特等席である。風は気持ち良いし、授業中も気付かれずに寝れる。
春が席に着くと、前の席に座っていた見た目からして野球をしてそうな男子生徒が話しかけてきた。
「春、今日1時間目が体育に変わったって!!」
「え!?マジかよ…………」
春は嫌な表情を見せ、鞄から教科書類を取り出し引き出しに入れる。
春の前の席に座る、黒市久弥は笑いながらガッツポーズを見せた。それもその筈。久弥は体育が一番好きだから。
「しかもサッカー♪勉強なんてやってられっかよ!!」
久弥は悠長にも鼻歌を歌いながら言う。春はため息をつき、重い気持ちで席に着いた。
「サッカー苦手だよ………………」
春は呟き、机にうつ伏せで倒れ込む。窓の方を向き、気持ちのいい風に当たりながら外を見た。
「………雨でも降れよ。」
雲一つない青色の空に、春は言った。
答えも帰ってくる筈もなく、再び大きなため息をついた。そして、いつの間にか寝てしまう。
そして、目が覚めたときには1時間目の時間を迎えることになっていた。
**********
「お〜い、皆着替えたぞ!!」
「うっ………うわっ!!やべぇ!!!」
春が目を開けると、すでに体操服姿の久弥に生徒達が視界に入った。ほとんどの生徒が教室を出て行き始める。
久弥は笑いながら春の肩を叩く。すると、前の方から体が大きい体育委員でラグビー部の熊尾剛史が歩いて来た。
「白宮、最期教室の鍵閉めとけよ。」
「分かったよ………」
熊尾は教室の鍵を春の机の上に置き、そのまま教室を後にした。
「俺も先行くよ、じゃ!!」
久弥も行き、教室には春1人だけになってしまった。春は制服を脱ぎ、横に掛けてある体操服袋を手に取る。
そして、シャツを脱いだ時に右腕に張った湿布を見て思い出した。
「そういや、あの痣治ったかな?」
春は首を傾げながら、ゆっくりと湿布を剥がした。その瞬間だった。
『アルカナに選ばれた32人の幼子よ 覚醒せよ』
「え?」
湿布を剥がした瞬間、脳内に響く年配の男性声。春は辺りを見渡したが、無論、教室には誰もいない。
「な、なに今の………うぐっ!?」
次に襲いかかったのは、今までに味わったことのない頭痛だった。春は頭を両手で押さえ、その場に倒れ込む。
頭が割れてどうにかなりそうな程の痛み。春は声にならない痛みをどうやって表現したらいいか分からない。
「痛い………痛い……………」
『♯Rの印を持つ青年よ 世界を救いたくば運命に身をゆだねよ』
「……は?………な……に…いっ………て………る………………」
春は痛さに耐えきれず、そのまま気絶してしまった。