ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: A R C A N A  ( No.3 )
日時: 2011/02/10 20:41
名前: 鷹の目 (ID: BZFXj35Y)

【3.異空間】


「うっ………ぐっ……………」



春はゆっくり目を開けた。目を開けると、春の目の前に女の子が現れて春をじっと見つめ始める。
「大丈夫ですか?」
「ぇ………誰?ここは2−10の教室だ…………」
春は起き上がりながら女の子に言った。しかし、女の子は首を傾げて春の顔を見る。
春が起き上がって辺りを見渡すと、そこには教室ではない想像を絶する光景が広がっていた。



上下左右に果てしなく続く「無」或いは「白」の空間。空間に浮かぶ謎のマンションの屋上に、春は立っていた。



春は目をパッチリと開けて唖然となる。すると、隣にいた女の子が心配そうな表情で春に声をかけてきた。
「あなたも………その頭痛で?」
「…え?あ、確か頭痛で倒れて………気絶して………」
春はその言葉を聞いて女の子を見る。女の子も春を見た。2人の間に、一瞬の沈黙が走る。
沈黙を破ったのは、小柄で純粋な目をした可愛らしい女の子であった。
「私は荻原遊里っていいます…中3です………一応、自己紹介。」
「お、俺は白宮春。高校2年生………よろしく……。」
2人はお互いに軽く会釈をして、顔を合わせて苦笑いをした。

しかし、そんな自己紹介で現在の状況が解決する訳がない。

2人は改めて辺りを見渡した。
「しかし………ここはどこだ?夢の中って………感じじゃないな。」
「そうですね……。とりあえず、下見てみます?」
遊里の提案に春は頷いた。2人はマンションの屋上から、下を見下ろした。しかし、“下”という方向はなかった。
果てしなく「白」の空間で距離感が掴めない。2人は諦めて屋上を見渡す。だが、何もない
「どうなってる………ここはどこだ………」
春が1人呟いたその瞬間だった。






『#Rの幼子、#Jの幼子。ようこそ、“アルカナ”へ』






突如、春の頭に気絶する以前と同じ男性の声が聞こえた。春が遊里を見ると、どうやら遊里にも聞こえたらしい。
2人は辺りを見渡しが、勿論誰もいない。それはおろか、マンションと自分たち以外何もない。


『REALに戻りたければ、#Jの能力を使い道を切り開け。そして、世界を救え。』


「え?なんだよっ………Jってなんだ!?リアルってなんだよ!?」

春は相手が誰かも分からないのに大声で叫んだ。しかし、その男性の声はその言葉を最後に聞こえなくなった。
「何だよ……♯Rとか#Jって…………え?」
春は自分の発した言葉で思い出した。今朝見つけた、“#R”の痣のことを─────。


         **********


春は着ていたカッターシャツの右腕を肩まで捲り上げた。すると、右腕の中央部分に“#R”と赤い痣があった。
それを隣で見ていた遊里は驚きのあまり、口を両手で押さえる。そして、なぜか自分の左手を差し出した。
「こ、これ……………」
遊里は左手の甲を春に見せる。春は遊里の左手の甲を見て言葉を失った。






“#J”と浮かび上がった赤い痣───────






それは、まったく春と同じ様な痣であった。春はどうすることもできず、ただ笑いが込み上げた。
「はははっ………なんだよ、どういうことだ?」
「能力とか言ってたよね?………私が#J………私の力で……道を………」
遊里は、左手の甲に浮かび上がった#Jの痣をじっと見つめる。春はため息をつき、遊里の肩を掴み軽く揺さぶった。
「さっきの声が言ってたことを鵜呑みにすんなよ。能力って………映画じゃあるまいし………」




「私は、信じるよ。」




遊里はそう言いながら、そっと肩に乗った春の手を退ける。春はポカンと口を開け、遊里を呆然と見つめた。
「馬鹿と思ってもいい。私は変わるんだ………変わってやる…………」





「あんな人生から抜け出すんだぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!!!!!」





遊里が叫んだ瞬間、左手の甲の#Jの痣が青白く光る。そして、眩い光が2人の視界を奪っていく。
「お、おい!!何だその光!!!」
「わ、わ、わ、分かんない!!!何これ!!!!」
遊里と春はあまりの眩しさに目を閉じ、そのまま意識が プツリ と途切れた。