ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ─A R C A N A─4話更新 ( No.4 )
日時: 2011/02/10 21:44
名前: 鷹の目 (ID: BZFXj35Y)

【4.荻原 遊里】




「おーい!!!もう放課後だぞ!!!!」



         バシッ!



誰かに頭を叩かれ、春は飛び起きた。目の前にいたのは久弥と保健室の先生である宮本小百合であった。
気付けば、春は保健室のベットで横になっていたのだ。宮本は春に駆け寄り、おでこに手を当てた。
「熱は引いたかな?帰ったら安静にしときなさいね。」
「え?俺って…………」

「お前、教室で倒れてたんだぞ。俺と他の男子に先生がここま運んで来てやったんだから感謝しろよな!!」

久弥は笑いながら春の肩をポンポンと叩く。春はまったく意味が分からなかった。
ついさっきまでは、確かに荻原遊里という中学3年生と白い空間に浮かぶマンションの屋上にいた。
そして、遊里の痣がいきなり光って気付いたら──────


「お前の鞄持ってきてるし、一緒に帰ろうぜ。」


久弥は春の鞄を春に渡した。春は久弥にお礼を言い、とりあえずベットから出た。
「じゃあ、気をつけてね。」
宮本にお礼と挨拶をすると、2人はそのまま学校を後にした。


         **********


空が綺麗な橙色に染まり、夕日が雲の隙間から顔を覗かせていた。黒い鴉が夕日に向かって飛んでいる。
2人は大通り沿いを並んで歩き、雑談をしながら足を進める。
「でもよ、まさか過労で倒れるなんて思ってもなかっただろ?」
「え………あ、あぁ。そうだな……驚いたよ!!」
春は話を合わせながら久弥と会話する。どうやら、春は過労で発症した熱で倒れたことになっているらしい。
2人は大通りから住宅街に入る。規則正しく列で並んだ2階建ての家。その間の列を、2人は歩いていく。


「じゃあ。色々ありがとう。」


春は自宅前に着くと、久弥にお礼を言って玄関を開けた。
「ただいまー。」


「おかえり、お兄ちゃん。」


家に入ると、リビングの方から妹の奈々が春に駆け寄ってきた。
春が玄関を見ると、見慣れない靴が綺麗に並んでいた。春が奈々を見ると、奈々はリビングに指を指した。
「今、先輩来てるの。別にいいでしょ?」
「ん?いいよ、俺は部屋にいるから。」
春は玄関を上がり、階段を上がって自室に入った。鞄を床に放り投げてベットにダイブする。
背伸びをすると、勉強机の横にある雑誌が入った箱に手を伸ばす。適当なメンズ雑誌を手に取り、読み始める。



30分後________



春はいつの間にか寝ていた。読んでいた雑誌を顔に被せていたが、階段を上がってくる音が目が覚めた。
ドアが開き、奈々がベットで寝ていた春に駆け寄る。
「お兄ちゃん、先輩がお兄ちゃんに会いたいって。」


「は?」


春は思わず声を出して言ってしまった。奈々も首を傾げ、表情を歪める。
「どうして?」
「なんか…………お兄ちゃんのこと知ってるから会いたいって……………」
奈々の言葉を聞き、春はベットから起き上がって首を傾げる。まったく意味が分からないのだ。
奈々はそれだけ言うと、すぐに春の部屋から出ていった。春は立ち上がり、とりあえず一階へと向かった。


         **********


1階に向かい、春はリビングの方へと向かう。そして、リビングを見た瞬間に春の体に寒気が走った。








「ど、どうも……………春さん。」








「え?…………あ、あ、あ、あぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」








春の目の前にいたのは、夢?の中で会った荻原遊里であった。隣で見ていた奈々は、驚いた表情で春を見ている。
「なんで驚いてるの?てか、荻原先輩と知り合いなんだ。」
「えっと………まぁ、この前俺の高校の文化祭で会って……この子は俺の後輩の妹なんだ………」
春が適当に知り合いの理由を言うと、奈々は疑いもせず納得した。遊里は立ち上がり、奈々に笑顔でお礼を言う。
「突然ごめんね。じゃあ、また明日学校でね。」
「はい。」
奈々は笑顔で遊里を玄関まで送っていく。春もとりあえず玄関までついて行く。


「もう6時過ぎだし、家の近くまで送ってやる。」


春はなぜか、そんな言葉がふと出てしまった。
ポカンとする妹の奈々。玄関で靴を履いていた遊里も思わず動きが止まる。しかし、遊里はすぐに察知した。
「じゃあ、お言葉に甘えて………いいですか?」
「あぁ。話したいことも……色々あるしね。」
春は遊里の隣で靴を履く。奈々は2人の後ろ姿をポカンと見つめている。

「すぐに戻ってくるから。それまで留守番頼むよ。」

春は奈々にそう言うと、遊里と共に自宅を出た。