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Re: ─A R C A N A─5話更新 ( No.7 )
日時: 2011/02/11 11:03
名前: 鷹の目 (ID: BZFXj35Y)

【5.運命を支える者】


日も完全に沈み、6時半過ぎの東京はネオンで染まりつつあった。春と遊里は、住宅街を並んで歩いていた。
「えっと………妹と知り合いなんだ。」
「はい。なんか凄いですよね。まさか、こんな接点があったなんて。」
遊里は微笑みながら春に言う。実際、春はこの接点に驚いていた。まるで、運命の様な感じがしていた。
2人は住宅街を抜け、ネオンで輝く東京の大通りに出た。帰宅するサラリーマン、夜遊びをするつもりの未成年。
大通りには色々な人が歩きすれ違っている。そんな中を春と遊里も歩いていた。
「あの時、私の痣が光ったこと覚えてますか?」
「あぁ。忘れないよ。」



──────

遊里が叫んだ瞬間、左手の甲の#Jの痣が青白く光る。そして、眩い光が2人の視界を奪っていく。
「お、おい!!何だその光!!!」
「わ、わ、わ、分かんない!!!何これ!!!!」
遊里と春はあまりの眩しさに目を閉じ、そのまま意識が プツリ と途切れた。

──────



あの光で、アルカナが言う“REAL”=“現実”に戻ってこれた。春は、遊里の左手の甲の痣を見た。
相変わらず、赤色の#Jと浮き出た痣は痛々しそうに見える。遊里は自分の左手の甲を見ながら春に言った。



「私の能力は“運命の光”。現実に戻った後、アルカナが脳にそう喋りかけてきたんです。」



「え?」



遊里の言った言葉に、春の足の動きが止まった。しかし、なぜかそこまで驚くことはなかった。
再び足を動かし、遊里に質問する。
「アルカナはなんて言ってたの?」
「『#Jの幼子、汝は運命そのもの。汝の元に全ては集う』って言ってたかな?………そんな感じです。」
春は遊里の言葉を聞き、今朝の出来事が脳に蘇る。確か、気絶する前にアルカナが言っていた。







─♯Rの印を持つ青年よ 世界を救いたくば運命に身をゆだねよ─







この時、ようやく春はアルカナの言葉の意味が理解できた。つまり、#Jの称号を持つ遊里に身をゆだねることだ。
遊里は左手を星が広がる夜空に上げて、笑顔で春に言った。
「私は今まで悲惨な人生を送ってた。でも、アルカナが奇跡をくれた。私は、アルカナの言う通りに人生を進む。」
「………悲惨な人生って、何があったの?」

「私は父が借金を作って夜逃げ。母は1年前に過労死。今は祖父の家に暮らしてるんです。父に、父に復讐する。」

遊里は左手を拳に変える。春は遊里の寂しそうな顔を見て同情した。春にも、母と父がいないからだ。
2年前に春の両親は事故で死んだ。買い物帰り途中、車に轢かれて即死。犯人は未だに捕まってない。
春は自分と同じような境遇を辿った遊里に、かなりの親近感が湧いてきた。



「俺は君を支えるよ。」



春は遊里の肩を掴み、目を見て言い切った。遊里はあまりの突然すぎる春の言葉に顔を赤らめた。
だが、遊里も春の目を見てしっかりと頷く。
「ありがとうございます…………春さん……………」
「この痣のこと、アルカナのこと、2人で協力して答えを探そう。」
「はい。」
遊里と春は、顔を合わせて笑顔になる。そして、春はそのまま遊里を自宅近辺まで送っていった。


          **********


同時刻 東京─────


「はぁはぁ………な、なんだよこれ……………」


暗く湿った路地裏に、金髪に両耳ピアス、ダボダボのズボンと髑髏の模様シャツを着た未成年と思われる男がいた。
男は左肩を押さえながら、濡れた地面に座り込み、シャツを急いで脱ぐ。
すると、左肩には#Gと浮き出た赤い痣があった。男はその痣を見ると、形相を変えて「ひっ」という悲鳴を上げる。



「お〜い!!京介!!どこだよ〜ぉ、飲み行くんだろ?女待たせんなよ!!」



どこからか聞こえてくる他の男の声で、楠木学園の高校2年生である鷲谷京介は我に戻った。
「あ、あぁ!!すぐに行く!!」
京介は急いでシャツを着ると、左肩を押さえて湿った路地裏から出ていった。