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Re: ─A R C A N A─オリキャラ終了 ( No.29 )
日時: 2011/02/19 17:17
名前: 鷹の目 (ID: BZFXj35Y)

【10.波乱の始まり】


アルカナの説明を聞き、春は色々な疑問と驚きが脳内に駆け巡った。そして、今朝の出来事が思い浮かんだ。
「俺、朝“#I”の称号を持つ外人に襲われた……まさか、前回の6人の内誰かが………」
『確か16年前にフランス人のヨルゴ=ロンピエールという男がいた。君を襲ったのはそいつだろう。』
アルカナはペンを置き、前の方へとコツコツと足を鳴らして歩いていく。
春は表情が段々と暗くなり、なぜか悪寒が体全体に走る。
「この戦いの終わり方は………?」


『不明だ。この戦いは、全てが不明なんだ。』


アルカナは黒板の前に着くと、白いチョークを手に再び説明を始めた。黒板の真ん中に、白い丸を32個書く。
そして、その内6個の白い丸を塗りつぶした。
『過去の戦いの終わり方は不明。前回の戦いも、7人という人数で中途半端に終わり、僕が神になった。』
アルカナは塗りつぶした白い丸に、1個ずつ×マークを付けていく。そして、チョークを静かに戻した。
『戦いの終わりが云々の前に、君はこの6名と必ず戦うことになる。現に、1人と戦ったけどね。』
「………避けることは……できないのか………」






『運命なんだ。過去に逃げても未来に逃げても運命は変わらない。』






春は大きなため息をつくと、椅子に座りなおして天井を見上げる。
『僕は、君にこの戦いの答えを見てほしい。勝手だと思うが、君は選ばれたんだ。』
「俺には……家族がいる。両親はいないが、妹が残ってるんだ。死ぬわけにはいかない。」
『ならば戦え。僕は、この世界にはたまにしか来れない。助けにはあまりなれないだろう。』
アルカナは寂しそうな表情で春に言った。春は意味が分からず、無言で首を傾げた。
『僕は普段、君と#Jは行ったことがある異空間にいる。異空間“アイン=ソフ=アイン”という場所だ。』
アルカナの言葉を聞き、春は以前、遊里と初めて出会った異空間のことを思い出した。

果てしなく続く真っ白な空間、その異様な空間に浮かぶ窓がないマンション─────

『僕の家があそこだ。ここに来るのは、かなりの体力が必要となる。それに、時間は短い………』

アルカナがそう呟いた瞬間、アルカナの足が除々に消え始める。春は立ち上がり、アルカナに駆け寄った。
『僕が消えた瞬間に、時間は再び動き出す。次に君の元へ来れるのはいつか分からない。』
「…色々ありがとう。………神様。」

『よしてくれ。神様なんて……アルカナでいいよ。』

アルカナは笑顔でそう言うと、両手で春の右手をそっと掴む。そして、力強く頷いて口を開けた。




『戦いに勝ってくれ。白宮………春……………』




アルカナはその言葉を最後に、春の目の前から風のように消えた。



          **********



アルカナの言うとおり、時間は再び動き始めた。久弥は床から起き上がり、前の方にいる春を見て、首を傾げた。
「おい、春。どうした?」
「……何もない。ただ、考えていただけだ。」
春は微笑みながら久弥に向かって言った。しかし、久弥は春の微笑みの意味が分からなかった。
春はアルカナが消える前に黒板に書いた32個の白い丸を見る。×マークで消された6つの塗りつぶされた白い丸。
春は心の中で決心した。







     「必ず、勝って見せるよ。アルカナ。」────────