ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ─A R C A N A─第2章突入 ( No.32 )
- 日時: 2011/02/21 18:21
- 名前: 鷹の目 (ID: BZFXj35Y)
【11.学校強襲】
朝のHRを終え、生徒達は1時間目の授業の用意を始めた。春も机の中から教科書とノートを取り出す。
「春、今朝のこと先生に言う?」
「は?」
春は前の席に座る久弥の言葉に一瞬キョトンとした。しかし、久弥はアルカナに関しては何も知らない。
ヨルゴ=ロンピエールを不審者と思って、春に提案してきたのだ。
「いいよ。もう………」
「…春がそういうならいいけど。」
「ねぇねぇ、何の話してんの?」
春が久弥と話していると、春の隣に座る凛とした顔立ちの可愛らしい女子生徒が2人に話しかけてきた。
この2−10組の学級委員にして生徒会書記の立花玲奈は、首を傾げて2人に質問する。
「それがよぉ〜、今朝………」
「久弥!!!」
春は久弥の口を塞いで、無言で首を横に振った。久弥は察知したらしく。苦笑いしながら、2人で玲奈を見た。
玲奈は不審な物を見る様な目つきになり、久弥の口を塞ぐ春を目を細めながら見つめる。
玲奈は学園で指5本に入る、男子生徒に人気の女子だ。そんな女子に見つめられ、春は顔が赤くなるのを感じた。
「いや…はははっ………色々あったんだよ…………」
「あっそ。でも、問題起こしたらタダじゃおかないから。」
玲奈は前を向き、授業の用意を始める。春は久弥を見て睨みつけた。
「今朝のことは、あまり口に出すな。」
「お、おう……そうだな……」
久弥は納得して自分の席に着いた。春は安堵の息を漏らし、机の上にうつ伏せになる。
窓からグラウンドを見ると、どこかのクラスがサッカーの用意を始めていた。体育の時間なのだろう。
「………そういえば、ヨルゴみたいなのが後5人もいるんだよな………」
春は呟き、1人で大きなため息をついた。先のことを思い考えると、肩が重くなるのだ。
「とりあえず、何もない日が続くことを祈ろう。」
春はそう言うと、教科書とノートを開いたのだった。
*********
「ここが、#Rの餓鬼がいる学校か…」
派手な花柄のシャツに竜の描かれたズボンを着た#Dの称号者、越後金治は、楠木学園を見上げながら言った。
「しかし、どうやって探そうか。正面突破か………適当に校舎突っ込むか…………」
越後はしばらく悩むと、不気味な笑みを浮かべて両手を拳に変えた。そして、校舎の真ん中3階を見る。
「決めたぜ……突っ込む。」
越後がそう言うと、右頬に浮かぶ“#D”の赤い痣が紫色に染まり始めた。
「アルカナに与えられた力、“皇帝”の威力を思い知れ。」
越後は両足に力を入れ、そのまま右の拳を構える。そして、ジャンプした瞬間だった。
「シュッ」という音をあげ、越後がその場から消えた。
**********
数学の授業。黒板にはびっしりと数式が書かれており、眼鏡をかけたひ弱な先生が、生徒に勉強を教えている。
春は板書もせず、ただずっと窓の外を見ていた。勉強がやる気にならない理由は分からない。
春が窓の外をボーっと見ていると、隣に座っていた玲奈がため息をついて、春の右手を掴んだ。
「えっ?」
春は一瞬ドキッとなり、玲奈の顔を見た。しかし、春の思いとは裏腹に、玲奈の表情は怒っている様子だ。
「勉強してよ。………大学行きたくないの?」
「……え……あっと………」
春は緊張で言葉が思い浮かばず、ただただ玲奈の目を見つめる。
春は長い間玲奈を見つめており、玲奈も何かを感じたのか顔を赤らめて春をじっと見つめる。
「そ、その…立花、俺は……」
春が口を開いた瞬間だった。突如、耳を劈く様な轟音が鳴り響き、教室の壁が砂煙をあげて崩れた。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
生徒たちは悲鳴をあげて、教室のドアへと走って向かう。数学の教師は唖然とした表情で、崩れた壁を見つめる。
教室に残ったのは、春と玲奈、久弥に数学教師だけだった。4人は唖然とした表情で崩れた壁を見つめる。
すると、砂煙の中から越後金治が首の骨を鳴らしながら、教室へと足を踏み入れた。
春は越後の右頬に浮かぶ“#D”の痣を見て言葉を失った。
「また敵かよ…………ちくしょ……」