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Re: ─A R C A N A─第2章突入 ( No.33 )
日時: 2011/02/21 19:33
名前: 鷹の目 (ID: BZFXj35Y)

【12.vs“皇帝 越後金治” その1】



「さてと……探すか………」



右頬に“#D”の痣を持つ越後金治は、首の骨をポキポキと鳴らしながら2−10組の教室に足を踏み入れた。
壁に開いた巨大な穴、床に飛び散る壁の残骸とガラスの破片。そして、衝撃で無残に倒れた椅子や机。
「だ、だ、だ、だ、だ、誰だ………あなた…………」
未だに黒板の前でチョークを持って立っている、数学教師の久場小太郎は、足を震えさせながら越後に問う。
越後は不気味に笑うと、ゆっくりと久場に歩み寄っていく。


「お、おい……春、今朝の外人と雰囲気が似てねえか………」


「似てるも何も………」


久弥の言葉で、春はアルカナの言葉を思い出した。春は肌で感じる越後の殺気と力の差で理解した。
「前回の戦いの……生き残った6名の1人か…………」
春は前を見ると、両手を構えて越後に向かって走ろうとした。その瞬間、春の右手を誰かが掴んだ。
春が振り向くと、涙目で玲奈が春の目を見つめていた。
「な、何してるの……………逃げようよ…………」
「久弥、立花を連れて教室の外に逃げてくれ。……いや、学校の外に避難するよう呼びかけてくれ。」
久弥は春の言葉を聞いて慌てて頷くと、玲奈の手を握って教室の外へと走り出した。
と同時に、春も両手を構えて教室の前にいる越後に向かって走り始めた。
春は机の上に飛び乗り、越後の頭上に来ると、意識を集中させて両手を漆黒に変えた。















「気付くに決まってんだろ?」







越後は上を向き、両手を構えている春と目を合わせた。春は空中でどうすることもできない。
「当たりくじ引いたか。探す手間が省けたぜ!!!」
越後は落下してくる春の頭を鷲掴みすると、そのまま教室の後ろに投げ飛ばした。
春は机や椅子をなぎ倒しながら、壁に叩きつけられた。
「し、白宮君!!!せ、せ、生徒をよくもぉぉぉぉぉ!!!!!!」
久場は目の前にいる越後に向かって、無防備の状態で突っ込む。越後は鼻で笑い、久場を腹に蹴りを入れた。


「ぎゃ!」


小さな悲鳴をあげて、久場は空中を舞い床に叩きつけられる。そのまま頭から血を流し、気絶したようだった。
越後は床に倒れている春を見ると、余裕の笑みを浮かべながらジワジワと足を進める。
「今朝の外人の代理人だ。#R、貴様を殺すために来た。」
越後は倒れている春の胸ぐらを掴み、そのまま持ち上げた。そして、白いカッターシャツを両手で千切る。
すると、春の右腕中央に浮かび上がる“#R”の痣が、越後の視界に入った。
「間違いないな。それじゃあ、死ね。」
越後は右手に力を込める。すると、右手の周りに紫色の霧の様な物が発生し始める。




「“皇帝の一撃”を喰らってみな。一瞬で、腹にポッカリと穴があいて、あの世に行けるぜ。」




越後は右手を拳に変え、躊躇なく春の腹部めがけて殴りかかった。




        **********







「ごるぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」








突然の叫び声に、思わず越後は拳を止めた。越後が後ろ振り返った直後だった。



ガン!!



越後の顔面に、木製の机が見事にヒットした。越後は痛さを言葉にできず、そのまま床に倒れ込んだ。
春は越後と一緒に倒れたが、すぐに立ち上がって目の前を見る。そこには、金髪の男子生徒がいた。
「よ、よぉ!仲間だな。」
「…………誰?」
春は首を傾げながら男子生徒を見る。すると、男子生徒はシャツをずらして、自分の左肩を見せた。
男子生徒の左肩には“#G”と赤い痣が浮かび上がっていた。ここまできて、春は特に驚く様子もない。
「助太刀参上だ、必要だろ?」
「助かるよ………」
春は安堵の息を漏らす、#Gの称号者である鷲谷京介と肩を並べる。



「俺は鷲谷京介。よろしくな。」



「白宮春。よろしく。」



2人は笑顔で挨拶を交わすと、そのまま戦闘態勢に入る。
越後はゆっくりと立ち上がり、2人の方を物凄い形相で睨みつけた。越後の額からは、血が大量に出ている。







「殺してやる……。愚民が皇帝に勝てると思うなよ……」