ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

私の不幸なる日常 ( No.3 )
日時: 2011/02/20 12:58
名前: 故 ◆KJbhM1uqv2 (ID: QSygN.Tt)

#0

——言い訳になっちゃうかもしれないんだけれどさ、私は好きだったんだよ? あんたのこと友達だって思ってたんだよ? だから、あの時あの瞬間正直裏切られた気がした。

#1

 もしも、もしも二次元じゃなくて三次元という名の現実にパンを加えたまま走っている少女がいたとしたらどう思う? いやいやいや、そんな人いるわけないじゃないかなんていう突っ込みはなしね? ストレートにそんな人がいたとしたら貴方はどう思うのかなぁという問であって、その存在について肯定したり否定してもらいたいわけじゃないの。
あくまでも、そんな人がいたとしたら……という話なわけで、まじめに電柱柱に頭を叩き込んで死ねとかそういう意見が欲しいわけじゃないの。


 え、矛盾している? ならばもっと簡潔にきこう。貴方はその人に対して「変だなぁ」と思うか「痛い子だなぁ」と思うか「別にそんな人がいてもいいんじゃないかな」と思うか「むしろ自分」と思うか、まぁそんな感じでいわゆる「だから、どうしたの?」的な生産性のない答えを期待していたわけ。


 それで問が大分長くなってしまったけれど、あなたはどう思う?


 私はさ……うん。何もいえないな。コメントするという行為自体が間違っていてそれはそれで一つの心霊現象として認めちゃっていいんじゃないかなとか、そんな気がしてきちゃった。


 だってその人はあまりにもお約束的すぎたから。パンを食べながら走る。それならまだ一昔前の少女の憧れ(?)による暴走ですんでしまったのかもしれない。しかし、この場合その人は塀を越えるという本気の学校への近道をしようとして、しかも其処からお約束どおりの転落。で、その転落したところで受身を取れなかった可哀想なイケメンの位置に私が存在した。本当に運が悪い。さらに、たちの悪いことにその少女は一昔前のセーラー服に三つ編みという王道パターンの見た目。なのにだ……驚くほどのブスさだったわけ。


 三次元では中々にありえないブス少女。太ってたり痩せすぎたりスタイルが悪いわけじゃないのに、漂ってくるはブスオーラ。私は現実には本当に見るに耐えないほどのブスなんて存在しないと思っていたが、実際にいないわけではなかった! どっかの学者が絶滅したはずの生物を見つけたとかなんとかニュースでやっていたけれど、その学者はきっとこんな気分だったのかな? と私は思う。否、ブス少女に失礼かもしれないけれど。


 さて、現実逃避を止めよう。この少女にどいてもらわないと私も一緒に遅刻してしまうからね。べ、別にあんたと話がしたいって……本気でしたくありません。見た目で人間を差別するなとかいいますが、残念ながらここまでひどいと話しかけること事態がイジメなんじゃないかって思えてしまうし。所詮言い訳なんだけどさ。


「えっと、どいてもらえないかな?」


 私はそういわれてはっとしたのかすぐに私の上からどく。ふぅ、太ってはいないって言っても私だって普通の女の子だからこの重さは意外ときつかった。ああ、全身がだるい。とりあえず、必要なことだけ聞いてしまおう。


「どうしてこんなに急いでたわけ?」


 私はそう聞いただけなのに彼女は恥ずかしそうに俯きながら手をもじもじさせる。一個一個の動作がぶりっ子みたいでなんかいらつく。ぶりっ子じゃなくってブスっ子なのに。
 そして、彼女はいざ口を開こうとして銜えているトーストの存在に気づき、手を解いき右手にスクバ左手にトーストという不自然極まりない格好になった。


「お姉ちゃんがお弁当忘れちゃったから届けなきゃいけなくって……。でも、お姉ちゃんの学校へのルートってこれしか知らなくて。だって、お姉ちゃんがいつもこのルート使うから」


 美、美声。まさしくロリ声。神様が見た目を優遇しなかった代わりにそのマイナス分をすべて声にまわしてしまったほどの美しいロリ声! すごい! 私は天使……いいや神様にあったのか? この子の場合みた目を気にしてしまったら終わりだ。この見た目じゃなくて声だけならもう完璧に美幼女だ。美少女じゃなくて。ただ、こんなんだといじめられなかったかが少し心配。


 しかも、お姉ちゃんって呼ぶんだよ? 自分の姉のことを。だって見た目的にはこの子中学生でしょ? それならば本当にレアな子だよ。パーフェクトにいい感じな子だよ。さっきまでブスっ子ブスっ子思っててごめんなさい。私は貴方の美声に降伏しました。


「な、なら。お姉ちゃんって何処の学校に通ってるの?」


 つい、美ロリ声っ子の役に立ちたくなっていってしまった。もし私と同じ学校だというのなら届けてあげたくなってしまって。こんな裏の裏の近道ルートなんて危なっかしくてしょうがない。いつも命が危険にさらされているこのルートなんて、私の知ってる限り具子くらいにしか使えない。だって、塀の上歩いたり屋根の上を歩いたりするんだよ? 確かにものすごく速いんだけどさ、そんなルート使う気になれるわけないよ。まぁ、実は別ルート、そもそも別の学校っていう落ちもありえるんだけど。


 ただ、彼女はどうしてここまでこの危険ルートを使ってこれたんだろう? うん、謎だ。


「お姉ちゃんの通ってる学校は……千鳥第四中学校だったと思うの。ごめんなさい、確信がもてないや……」


 ロリ声と合わせて美ロリ声っ子はぺこりと小さく礼をする。うん、できたらこのまま顔を見せないで会話がしたいな。声を聞くと幸せなのに顔を見た瞬間なえるっていうのをあんまり繰り返したくないからさ。


 それで、千鳥第四中学校って今言ったね? 私とおなじ中学校って言ったね? 幸せ者の姉貴はわが中学校にいるって言ったね?


「よし、私が弁当届けてあげる。ちょうどおなじ中学校だし。だから、お姉ちゃんの名前を教えてもらっていい?」
「ありがとう! えっとお姉ちゃんの名前はのだともみっていうの。あ、私はかおるって言うんだよ?」


 それにしても声とセリフはあってるにしても、年とセリフはあってないなぁって思……え?


 今何、この子野田具美って言ったよね? あのクールビューティーにして日本刀が似合う女具美っていったよね? あれ、私の友達の妹だったってわけ? この狙ったような偶然の中でこれはなんなの? 運命とかそういうのだったの?


 とりあえず、私の聞き間違いだった確率もあるしもう一回聞いてみよう。


「お姉ちゃんの名前は野田具美っていって、二年B組の女の子。クールな冷静少女だよね?」
「うん。全部あってるよ。じゃぁ、このお弁当ボックスもってって!」


 ……遺伝子ってなんなんだろう? そんな事を思いながら私は彼女の左腕にかかっていたお弁当ボックス(幼稚園で見かけるようなゆるーい熊ではなく、リアルで北極にいそうなくまのプリントつき)をもらう。う、これ私の持っている弁当箱の二倍くらいの重さじゃない。見た目はおなじくらいなのに。弁当の中に何いれてんだろう? 箱自体は私の記憶の中では普通のキティーちゃんの奴だったはずなんだけどなぁ。
 まぁ、弁当箱は受け取ったしとっとと学校に行ったほうがいいのかな?


「じゃぁ、また会えたらね」
「うん」


 美ロリ声っ子——かおるはそう言うと、手を大きく振ってくれた。やっぱり、見た目もロリっ子ならすばらしいなと思う。けれど、しょうがないか。私は手を振りながら学校に向かって走り出した。後ろをむいていても電柱にぶつかるような馬鹿はしない。
 その時、かおりはふと何かを思い出したのか焦ったような顔をして、叫んだ。


「今日お姉ちゃん誕生日だから、ちゃんとお祝いしてあげてね! あんなお姉ちゃんだけど誰もお祝いしてくれないと泣いちゃうから! だって、お姉ちゃんのお友達なんでしょ?」
「うん。お祝いしてあげる。心のそこから」


 ……忘れてた。否、初めて知った。彼女の誕生日なんて。今日だったんだ。今日の朝、かおるちゃんと会えてよかった。