ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 学園WARS! 参照100突破^^ ( No.26 )
- 日時: 2011/02/13 22:50
- 名前: 葵那 ◆geiwiq3Neg (ID: ADUOsQyB)
- 参照: 旧2話借りたけど…疲れた。
「ね、見た見た!?さっきの神無月さんの!」「あぁ、まさに“刹那”…一瞬だったな」「やっぱ強ぇなー…」「凄いよな、手も足も出ないって感じ!」「流石神無月…恐るべし」「うわー、あいつとだけは戦いたくねーなぁ、だって強いじゃん」
倖は三つ目のあんパンにかじりつきながら、そんな周りから聞こえる声を聞いて、
少し頬を紅くしながら、彼女はらしくなく縮こまって一口二口。
こう見えても照れ屋な倖は嬉し恥しながらも、彼女はその事を誇りに思っていた。
だが、その高まった気分はある人物に一瞬にしてブチ壊される事となる。
「———フフ…相変わらずのようね、神無月 倖さん?」
不意に聞こえた声…まるで倖を馬鹿にしたような、しかしどこかお淑やかさを覚える声だった。
倖がその声を聞いて反射的に振り返ると、そこにはスカイブルーの瞳をした金髪の少女、
そして、白髪の背の低い可愛らしい女の子が立っていた。
「やっほ、こーうっ!さっきの見たよ、凄かったね!」
白髪の少女——鈴里 綾梅は人懐っこそうに微笑みながら、倖の側に寄って来てそう言う。
可愛い感じの癒し系美少女さながらのやんわりとした口調で言うが、何故か倖は苦笑を浮かべていた。
反転してスカイブルーの瞳の少女——アリス・シンフォニア。
まるでフランス人形みたいな風貌であるが、彼女は倖の親友であり最大のライバルでもある。
彼女は腕組みをしながら、倖を見据えて一言。
「ま、悪く言えば野蛮なだけですわ」
と、野蛮の二字をやけに大きな声で言ってみせた。
その言葉にカチンときた倖は、つかつかと文句言いたげにアリスの側に歩み寄る。
だがそんな倖を横目に、アリスはさらに挑発の言葉を連ねた。
「だって貴女…下剋上では強いかもしれませんけど、模試では笑える点数じゃない」
ブチッ
その時、倖の何かが切れる音がした。それは、倖にとって最も触れられてほしくない事。
「だれがっ…誰が馬鹿だって言ってみなさいアリス!アンタ本当許さないからッ!!」
そう、倖は致命的な程頭が悪いのだ。
下剋上意外に上位クラスに上がる事…それは単純。
———模試で高点数を取る事。
能力と言えど、千差万別。戦いに向いている物もあれば、不向きな物もある。
そんな戦いに不向きな能力を持った人は“模試”を言う物を受けるのだ。
模試というのは実技と執筆試験に分れている試験。
実技は才能を扱うテクニックを魅せる事だ。
この学園の校長に自分の才能を見てもらって、テクニックがより優れていたらクラスが上がる。
そして実技の後には執筆試験が行われ、学力も順位付けされるのだ。
元より、この学園には下剋上制度と模試制度と分けられており、
下剋上制度下の者は下剋上制度下の者どうしてしか下剋上を行ってはいけない。
模試制度下の者は下剋上をするのも受けるのも禁止されている。
それは、テクニックも強さも評価する学校側の最大の配慮なのだ。
しかし、下剋上制度下の者も定期的に模試が行われる。
倖はその模試では点数が低い、という訳だ。
「残念ながら、私は“サイコメトリー”でじきにSクラス入り…ま、生徒会の7人には入れないけどね。
う・ら・や・ま・し・い・で・しょ?お馬鹿な神無月 倖さん」
「ちょっ…アリス!そろそろ本当にやめといた方がいいよ!倖——滅茶苦茶怒ってるって!」
アリスの持つ能力———“サイコメトリー”、それは超能力の一つで
物体に残る人の本心や目的・思考方法・想念波動…つまりは残留思念を読み取ることのできる能力である。
アリスのその能力は学校側で高評価されており、彼女はいわば優等生である。
大して綾梅の能力は“共感”。人の感情を読んだりできるらしいが、相性のいい相手じゃないと
感情を読めないのだとか…。彼女が私の感情を読んでいる所から、彼女と私の相性はいいらしい。
———だが、今の私にはそんな事どうでもいい。
「もう許さない…!!喧嘩よ喧嘩!アンタのその顔たんこぶだらけにしてやるんだから!!!」
倖は腰にしていた木刀をアリスへと向けて、そう罵声を浴びせた。
「フフフ、悔しかったら捕まえてごらんなさいよ?」
だが、アリスはそうなる事を見越して一歩早く逃げていた。
倖は捕まえてやると言わんばかりにアリスを追う。
「ちょ、ちょっと二人共!待って!———待てっての!」
そしてそんな二人の後を綾梅が追う形となった。
「うふふ、どうしたのかしら?動きが遅くてよ??
——それとも、“刹那”の“才能”を使わないと、自分の速さでは追いつけないのですか?」
アリスは楽しそうにまた倖を挑発して、倖の先を走ってゆく。
そんなアリスが憎たらしくて、木刀を振り回しながら倖はこう叫んだ。
「五月蠅い!とにかく待ちなさいよっ、私がアンタをボッコボコにしてらるんだからね!!」
——ドンッ
と、
そんな時、アリスを追いかけてつつそう叫んでいた倖は、不意に誰かに木刀を当ててしまった。
相手の青年は体勢を崩し、背中向きに倒れてしまった。そして、痛そうに木刀の当たった肩を押さえている。
『あっ———しまった!』
倖は、慌ててその青年に駆け寄ろうとした。
が、しかし、次の瞬間相手から思いがけない言葉が飛び出した。
「触るな…!」
その青年は、ギロリと睨みつける様に倖を見ていた。
「え…」
思わずそんな声を漏らして固まってしまった倖は、不覚にも怯んでしまった。
すると、青年は何事もなかったように立ち上がり、「フン」と不機嫌そうにそう言いながら
倖の横を素通りして行った。
「今の…荒崎 御影じゃねぇか?」
と、その青年の方をみてぽかーんとしている倖に、隣にいた綾梅が倖に手を差し出しながらそう言った。
ハッと我に返った倖は、綾梅の方をじぃっと見て一言。
「…本性、出てるわよ」
「えっ?うわ、ヤベッ…本当だ」
綾梅は思わず口を塞ぐが、一間置いて咳払いした後いつもの調子に戻っていた。
…、
「所で…荒崎 御影って?」
と、今度は一間置いた後、倖はハッとするように二人に尋ねた。
「…あら、荒崎 御影?確かFクラスの方だと思いますわ。
…あまり関わらない方がいいですわよ?Fクラスは悪い噂しか聞きませんし」
すると、アリスは腕を組みながら、思いがけない様な事を言った。
…
………F?
「はぁ?Fクラス!?あいつ…何様のつもりよっ!!」
倖は思いがけないアリスの言葉に、思わずそう叫んでいた。
そして機嫌を紛らわせるかのように、さっき食べかけていたあんパンにかじりついた。
そして、フンッと倖も彼が立ち去った方に背を向けると、
アリス、綾梅とその場を去っていった。