ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 機械達ノ笑ウ場所 ( No.3 )
- 日時: 2011/02/12 15:04
- 名前: 黒鳩 ◆k3Y7e.TYRs (ID: Y8BZzrzX)
プロローグ2 人を助ける兵器?
「貴方は、死なない。死なせない」
「…あ?」
今、この人形、何か、言ったか?
「貴方の、家族を襲ったことは、お詫びできないけど」
「何…言ってやがる?」
前髪で隠れたままの顔で、少女は言葉を紡ぐ。
「貴方の家族は、誰も死んでない。殺させてない」
「何だと…」
しかし男性はこの目で見た。
爆風で吹き飛ばされる自分の妻を、子供を。
「あの爆発で、子供と女性が気絶した。確認してきたから。間違いない、細胞検査の結果、貴方の家族」
「てめえ…何を」
「もう後、137秒で貴方は失血死する。でも、まだ間に合う」
少女は近くに落ちていた鮮血滴る男性の右腕を拾ってきた。
「開いた傷口を塞いで、造血、及び輸血する」
少女は、切り取った腕を血の出ている傷口に合わせた。
「ちょっと、痛いけど。我慢して」
そのまま短機関銃を放り投げ、手のひらを傷口に押し付ける。
「ぎゃあああああ!!」
その瞬間、焼け付く痛みが男性を襲う!
全身を焼かれるような、凄まじい熱の中に放り込まれたかのような。
「終わった」
「はぁ…はぁ…」
全身が火照る。
だが、痛みはない。
右足も、右腕も、全身も痛くない。
右腕も繋がってる。
「動けるはず」
「…てめえ!」
動くと判断した瞬間、男性は素早く立ち上がった。
そして少女の捨てた短機関銃の銃口を少女に向け、吼える。
「てめえ!何のつもりだ!」
「…別に。責任を取っただけ」
少女は長い前髪で隠れた顔を向け、答えた。
「俺を殺そうとして次は助ける!?何なんだお前は!?」
「何と聞かれても」
こめかみに人差し指をくっつける。
少女は少し間を開けて答えた。
「東の国の機械兵器。型式は汎用性高機動殲滅兵器。パーソナルネームは翡翠」
「…俺が聞きてえのはそんなんじゃねえ!行動の理由だ!!」
「だから、言った。責任を取った」
「ふざけるな!知ってるんだ!てめえら木偶人形に感情がねえことぐらい!」
木偶人形、と言われた瞬間、翡翠と名乗る少女は悲しそうにを呟く。
「私は…人形じゃない…」
しかし、この呟きは男性の耳には届かない。
男性を支配するのは困惑と怒りだ。
「責任を取った!?なら最後まで取ってもらおうか!」
そのまま銃口を頭に向ける。
「私を殺すの?」
「殺す!?馬鹿か!壊すんだよ!」
「その程度の武器で?」
その一言で怒りが冷水を被ったように消えた。
よく考えたら彼女は、兵器なのだ。武器ならいくらでも携帯しているだろう。
「私は傷つくのは嫌。だから傷つけるつもりなら、殺す」
左手の剣を男性に向け、続ける。
「自分勝手でも構わない。それでも、嫌なものは嫌。だから、殺す」
「てめえ…」
銃口が鈍る。
彼女は兵器だ。
弾丸より早く動けるのは男性でも分かる。
怪我が治っても絶望的な戦力差は変わらない。
「でも、出来れば抵抗しないで。このまま帰って」
「ふざ」
「ふざけてない。家も、可能な限り修復した。だから、帰って。あの場所に」
男性の台詞を潰し、翡翠は更に刃を巨大化させる。
「今すぐ、黙って帰って。お願い」
「…」
チッと舌打ちし、銃口を下げる。
「ありがとう」
「てめえに礼を言われる覚えはねえよ!!」
悪態をついて男性は走り去った。
後ろから撃たれない確信があった訳でない。
単純に、村が心配だったのだ。