ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 機械達ノ笑ウ場所 オリジナルキャラ募集中です ( No.36 )
日時: 2011/02/19 15:28
名前: 黒鳩 ◆k3Y7e.TYRs (ID: Y8BZzrzX)





3話 inside   思い出に浸る兵器




「……」

翡翠は星空を見上げていた。

結局は、取り合えず今夜はここで休憩して、朝になったら移動しようということになった。

流石に徹夜の逃走と戦闘によって皆疲弊していた。

ジュンとリアスは荷物を枕にして白い草の上で眠る。

時々リアスが寝言で何か言っているのが聞こえる。

セリアは基本睡眠を必要としないが、大木に寄り掛かり、スリープモードにしてい休んでいる。

水晶は魔術師二人の動きを警戒していたが、睡魔と疲労が限界に達し、攻撃されないよう、木上で眠っている。

随分器用だな、と翡翠は素直に感心していた。

彼女はナノマシンのせいで、多少眠らなくても何の影響もない。

翡翠は、星空を見上げながら、過去の自分を思い出していた。

といってもナノマシンの効果で過去の記憶が断片的にしか残ってはいないのだが。

その少ない記憶の中で、自分以外で印象的な金色の髪と、綺麗な蒼い瞳が残っている。

「……」

とても大切な人であること、それは妹のような存在であったこと、それは少女だということ。

それ以外は分からない。顔も、名前すらも。

「……」

先程衝動的に思い出した、その彼女は、今どこで。

「…」

自分と一緒に捕獲されたことは覚えている。

しかし、その後は一切詳細がない。

もしかして、殺されてしまったのだろうか?

しかし彼女は魔術を使えた筈。風の魔術。

その時は、翡翠は彼女と共に行動していた。

同じ戦争孤児、居場所などない戦場で。

戦場で出会った記憶は残っている。

「……」

名も覚えだせないその彼女は、翡翠を『姉さん』と呼んでいた。

水晶とは違う、意味で。

水晶はただ愛称で『お姉ちゃん』と呼ぶだけだ。

しかしお互い家族を失った二人は、姉妹のように生きた。

それこそ一緒に生き残り、いつか一緒に笑うために。

あのまま一緒にいたかったと、今の翡翠は感じる。

何で、兵器になんかなってしまったのだろう?

「……ごめんね」

気がつけば謝罪の言葉が流れ出ていた。

私と一緒にいたせいで、貴方にまで迷惑掛けて。

今は死んでるか生きてるかすら分からないその少女。

会えたら、まず最初に謝りたい。

生きていれば軍人になってるか、或いは翡翠と同じ人形になってるか。

でも、会えば間違いなく敵なのだ。

逃走者の翡翠からすれば、追っ手は全て敵。

「……」

仮に、その女の子が立ちふさがったら、今の私は戦えるかな……?

翡翠は悲しくなった。

一緒にいたかったと思う少女すら、殺さなくちゃいけない自分。

そして、そんな自分について来てくれると言ってくれた水晶に申し訳なくなった。

しかし、ここまで来てしまった。

もう、後戻りは出来ない。

自分勝手でもいい。私は、兵器じゃなくて、人間として生きたい。

こんなに早く決心が鈍りそうになった。

「……私は、もう誰の道具でも、ないんだから」

その台詞は、自分に言い聞かせるものだった。







しかし、遠く。




誰もいない暗闇の中、その言葉を聞いている者がいた。

人間でも、機械でも、人形でもない者。

自称、歴史の観測者が蛇のように笑う。



「兵器は、兵器ですよ……。その定理は歴史が証明しているのです。逆にするなど、歴史に反します。貴方なんて、(ピーーーーー)です」




何気に下品なことを言っている。

しかし、蛇の笑いには嘲笑しかなかった。