ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 機械達ノ笑ウ場所 オリジナルキャラ募集中です ( No.52 )
- 日時: 2011/02/25 13:15
- 名前: 黒鳩 ◆k3Y7e.TYRs (ID: Y8BZzrzX)
4話 backside 異世界からの迷い人
白の森で、翡翠が大騒ぎしている頃。
東のとある小さな村で、一人の少女が木の天井を見上げながら一人呟いていた。
「わたしは何でこんな異界みたいな場所にいるのかな…」
少女の名は神崎美月。
セリアと同じく、異世界と思われる場所から偶然迷い込んだ少女だ。
美月は、壁に引っ掛けてある自分の元、真っ白なドレスに目線を行かせる。
そのドレスは、所々に赤黒い染みが飛び散るように染みていた。
まるで返り血を浴びたように。
実際間違ってはいない。
彼女は元の世界で殺人を何回もしている。
彼女が殺してきた理由は、自分を殺してくれる相手を探すため。
自分で自分を殺すのは、彼女は怖い、だから、殺されることを望む。
死にたい故に、人を殺す。
自分勝手な理由だ。
そんな理由で人を殺すことが許されることはありえない、はずだ。
だが。彼女の世界は違った。
許された。彼女の世界で彼女が殺してきたのは世間的に『悪人』と呼ばれた連中だ。
私腹を肥やすために民の税金を己の物にした政治家。
己の快楽のために無差別に人を殺し続け、彼女に殺される瞬間まで壊れて笑っていた殺人鬼。
努力もしないで、他人から奪うことだけで楽をしようとした強盗団の一味。
そういう罪人は、彼女の世界の法では裁ききれない。
そして、そのせいで涙を堪え、嘆くことしか出来なかった人たち。
その人たちを、美月は何人も見てきた。
無念を晴らせない人々の痛み、苦しみ、恨み。
美月は決めた。
『自分の死に場所を探すついでに、この人たちの無念をわたしが果たそう』と。
たまたま利害が一致しただけで、彼女は何人もの罪人を血祭りに上げてきた。
そのせいで、彼女は警察に追われる一方、匿ってくれる人々も多くなった。
そんなこと望んではいなかったのに。
匿ってくれた人たちはお礼を言った人がほとんどだ。
『息子の無念を晴らしてくれてありがとう』
『あいつが死んでようやく落ち着いて暮らせる』
『殺してくれたおかげで、無くなった物が返ってきた』
そう言われる度に、美月は苦笑した。
自分勝手な行動が、何時の間にか人を救えていた、と。
そして、死に場所を求めてふらふら彷徨っていたら、気付いたらこの世界。
殺しが日常茶飯事、怯えて暮らす人たちがいるこの世界に来ていた。
そして、早々に厄介ごとにに巻き込まれた。
「ま、そのおかげでこうして寝られる場所だけは確保できたんだけど」
ならず者に襲われている村人を、放っておけず、そいつを持っていたナイフで惨殺。
その姿を見た村人は、返り血で紅く染まり、下らなそうに俯く彼女に怯えて逃げてしまった。
後に、駆けつけた村人たちは、死体を適当に捨ててきた彼女の姿を見つけ、村人の一人が美月に声をかける。
「よければ、その血、流さない?」
その申し出をありがたく思いながらお願いした。
事情をその村人に話し、どういうことなのか聞いた。
何でもその人の話によると、機械人形なるものに襲われた時もとある少女が助けてくれたらしい。
そのまま村長という初老の男性の自宅に呼ばれた。
そこで今のこの村の状況を聞かされた。
この村には自警団が存在しないらしい。
そのことも踏まえて、彼女にしばらくこの村で生活して、そういうならず者とか機械人形から、村を守って欲しいといわれた。
村長はは自分勝手で申し訳ないと、何度も謝罪した。
しかし美月は笑顔で了承した。
「わたしみたいな殺人鬼でもよければ喜んで」と言った。
村人の中には自分たちを殺そうとしないか心配そうな目で美月を見る人たちもいた。
しかしそれはわずか一ヶ月程度で完全になくなった。
美月以外にも、この世界に迷い込んだ少女がいた。
名は白宮和沙。
天然のほわほわ少女で、美月が殺人鬼と聞いても、『ほわ〜』と間の抜けた返事しかしなかった。
その少女と共に暮らすようになったが、その世話する様子や村人に対する礼儀正しい態度から、美月は何時の間にか信用されるようになった。
ただ何回かこの村を襲う連中を血祭りに上げたとき、怖そう瞳で自分を見つめられ、何ともいえない気分になった。
でも、自分は死に場所を探しているだけ。
その過程で人を助けれるならそれでいい。
そうこう考えてる間に、相方が目を覚ました。
「んぅ〜」
「…おはよう和沙」
「つっきー……お腹減った」
「つっきー呼ぶなって何度言ったら理解するの和沙……」
起きて第一声が「お腹すいた」
何とも微笑ましい光景に、美月は回想を頭から消し、苦笑しながらベットから降りた。
「はいはい。ご飯ならすぐ作るから、あんたはさっさと髪梳かしなさい」
そうして、裏側の主人公たちの朝が始まる。