ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 英雄の取り扱い説明書 ( No.2 )
- 日時: 2011/03/17 00:44
- 名前: きの子犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: Q2XZsHfr)
この世はまさに何が起こるか分からない。そうは思わないか?
いきなりですまない。俺は嶋野 香佑(しまの こう)という、一般高校生だった純粋な男子だ。
何で唐突に意味の分からないことを言い出したのかと問われれば——返しようがありません。
何故ならそれは当たり前だからさ。唐突に物事が様々な展開を見せていくように、予想だにしないことが起こったりもする。
世界はそうやって偶然や突然によって回っているものだと俺は勝手に自己解釈させてもらう。
「何でこうなった」
そんなセリフを何度も吐いては、そのたびに俺は挫折した。
挫折。いや、感動? いや、それも違うな。
最も近い感情を言い当てるとすれば——困惑だ。
そう、困惑。俺はもう困惑しすぎて爆発したい気分だ。——何言ってるのか自分でも判断がつかないほどに。
「何でこうなったんだぁぁぁぁっ!!」
そうやって大声を出して叫んだら何かが吹っ飛びそうな気もした。
でも、何も変わりはしない。世界は偶然と突然……って今考えるとどちらも同じような意味合いだったな。
とにかく、その二つによって構成されてるんだから、仕方ないよな。
え? さっきから意味が分からない? ふむ。じゃあ、紹介する。
つまり、まあ……簡単に俺の目の前の風景をそのまま言うと。
美少女一人、美少女一人、美少女……まとめると5人の美少女が物騒なものを持っているわけですよ。
え、ハーレムじゃないすか。やっほーいっ! ていうことには——ならないよっ! 物騒なものを下ろしてくれれば少し安心するけどっ!
「え、えぇ〜〜……」
ボソッと俺は呟いて、できるだけの笑顔をハーレム女性達に向けた。いきなり窓を壊して入ってきたので飛び起きたわけなんだが。
——笑顔で返されるのがこれほどまでに怖い瞬間ってありましたかね?
それもみんな大きな刀やら何やら物騒な物を持っている。ロリな顔に見事マッチした服装でだぞ?
朝目覚めたらこの状況はシャレにならん。
「あの……俺が、何かしましたか?」
窓が全開のせいかなのかすげぇ寒い。ものすごい風が室内へと吹き込んでいるのが肌に染み渡る。
——あ、すげぇ寒いのは殺気みたいなものをビシビシと伝わるからか。
と、そこで急に右手に物騒なものを持ち、左手に——雑誌のようなものを持った美少女が俺に近づいてくる。
その反射かどうかは分からないが、体がビクッと震え上がった。
「な、何っ!?」
「嶋野様☆」
思わず語尾に☆がついてしまうような可愛らしいロリ声でその見れば見るほど可愛いと思ってしまう女の子は雑誌の方を俺に差し出した。
「……取扱説明書?」
その雑誌には、取扱説明書と大きく表紙に黒字の殺風景で載せられていた。
——何の取扱説明書だよ。
「それでは、私達はこれで☆」
最後まで右手にそれぞれ持つ物騒なものを除けば可愛らしい女の子たちは大きく半壊した窓から大空へと消えていった。
——ただの人間じゃないのは分かったが、とりあえず窓を直していけよ。
「一体、何が起こったんだ……?」
頭の中が突然の出来事すぎてパンク中な俺は半壊した窓をただただ見つめるしかなかった。
——手元に不気味な取扱説明書を残して。