ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 英雄の取り扱い説明書〜美少女ですが、何か?〜参照900突破! ( No.96 )
- 日時: 2011/06/21 23:48
- 名前: きの子犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: hF19FRKd)
たまに、アニメやドラマでよく見る光景とか、本当にあったら面白いなぁと思うことがよくある。
でも、それらは皆実際にあったらもの凄く大変だし、面倒なことばかりだ。
「か、体が入れ替わったっ!?」
そんなことをテレビに映る俳優が言ってる。その姿を見て、俺はそんなことがあったら……なんて思ってしまう。
もし、それが現実の物となったのならば、俺は誰と入れ替わりたいのだろう。
「……んなアホなこと考えてないで、とっとと寝るか」
そうして俺は眠りについたのであった。
——入れ替わった体
「ん……」
朝の日差しが俺の目元に当たる。そのおかげで目が少しボヤけながらも見えてくる。
ボーっとしながらも、なんだかこのまま寝てしまいたい気分になるが、朝飯を作らないとユキノから何されるかも分からない。
なので朝飯の用意をするために体を起こす。
「……ん?」
何か変だ。そう思った。
まず、部屋が違うこと。俺が現在いる部屋は昨日寝た時の俺の部屋ではなく——他の部屋。
「ここって、ユキノが使って——!?」
俺は驚きのあまり、口を塞いでしまった。
何故か? 君達、よく聞きなさい。ある日、朝に目覚めたら——声帯が女の子になってたら驚かないか?
そりゃ驚くさ。現に俺が今そうなんだから。
それも、この声は聞いたことがあった。結構身近な人で、驚くのだが。
「これ……ユキノ?」
ユキノの声だった。俺が話すと、ユキノの声になって表れる。何か面白くて色々喋ってみることにした。
「ユキノのアホー!」
「ペッタンコーっ!」
「チビで態度デカいドアホー!」
——すげぇ。未だかつてないぐらいスッキリした気分になる。こんな気分になったのは槻児を殴り飛ばした時以上だな。
何故かテンションがあがった俺はベットから飛び起きた。……あれ? 何か身長ちっさい。
「俺、身長縮んだ?」
ユキノの声で言うのは何ともおかしいが、俺は笑いを抑えてとりあえず部屋を出ようとしたその時。
「え……?」
驚愕の事実がそこにあった。
「何で——俺、ユキノなんだ?」
俺の体はつまり——全身ユキノになっていて、顔も体も身長も何もかも全てユキノになってしまっていたのだった。
「えぇっ!! これ、どういうことだよっ!」
俺はテンション高い状態から驚きの声をあげる。そりゃそうだろう。いきなりすぎてついていけませんから。
「と、となると……?」
自分はつまり、ユキノの体になっているとすれば……当然、色々男にはないものがあったりなかったりもする。
「い、いやいやいや!! それは外道すぎる! そこまで槻児みたいにアホじゃねぇっ!」
そういって俺はベッドに腰かけるが、声がユキノなもので何故だか変に体が熱くなる。
これは夢なのだろうとほっぺたをつねってみても、全然夢は覚めない。それどころか、これが現実なのだと知らされているようだった。
「ほ、ほっぺた……柔らかいな」
と、俺は自分の手を——ではなく、ユキノの女の子さながらの小さな手を見つめながら呟いた。また、それの声もユキノ。
「……香佑君。私を、た・べ・て?」
何てことを言ってみる。言ってすぐに俺は頭を抱えて「うぉぉぉぉっ!」と叫び声をあげた。
何をしてるんだ、俺は……。
「と、とにかく……なんでこんな状況になったのか意味不明だし、本当のユキノはどこに行ったのか気になる!」
そういうことで俺はユキノの小柄な体で扉を開いた。胸が邪魔になるかと思ったら、見た目どおりのペッタンコなためにあまり邪魔でもなかった。
扉を開けると、そこにはいつものマイホームの廊下が広がっていた。結構広いのかもな、こうしてみると。
俺はそうして俺自身、結鶴、葵、燐を起こすことにしたのだった。
一同を起こし、何か一同様子がおかしかったが、とりあえずリビングまで下りてきてもらった。
「で……。お前は誰だ?」
どうやら皆どこか寝ぼけているようで、何がなんだか分からないどころか夢気分のようだった。
とりあえず、俺は自分自身である嶋野 香佑に問いただした。自分の姿を他人の目から見るというのは一生ない経験だろう。
寝ぼけた顔ではなく、俺はどこか凛々しい顔をしていたところから何か変な感じがする。雰囲気が、凛としているというか……。
「お前……もしかして、葵か?」
「……?」
首を傾げる、俺。あ、いや、体的に俺ってことだ。首を傾げる動作と言えば、葵だろう。葵自身もどこかつかめていないようで、なにやらキョロキョロと辺りを見ている。
「私は、誰?」
俺の声で……! 気持ち悪いと、葵には申し訳ないが思ってしまった俺だが、何とか抑えて答えることにした。
「葵。実はな、どうやら体が入れ替わってるようなんだ」
「体が……?」
俺は不思議そうな顔をして俺……というか、ユキノの体をした俺を見つめる。——正直、見つめられると気持ち悪くて仕方がない。
「ふみゃぁ……」
何だかもの凄く可愛らしい声で寝ぼけたことを言っているのは——なんと、葵だった。あ、いや、体とかが葵ってことだ。凄く色っぽいんだが、今はそれどころじゃないな。
それも、何故か幼女ではない。あのスタイルの良い感じの少女姿で、だ。寝たらあの姿になるのだろうか?
「あれ、私。何で、元の姿に?」
どうやらそうではないらしいな。葵自身も不思議がっているようだ。
「く、喰らいやがれぇっ!」
「えぇっ!?」
葵が喰らいやがれ、というセリフは全然似合わない。こんなことを言うとするならば——ユキノだろう。
葵にユキノが……。何ともミスマッチな感じだな。俺に葵がいくのもミスマッチなんだが。
寝ぼけているようで、顔を腕に埋めて静かに寝息を立て始める葵の姿をしているユキノ。
こうしてみると愉快極まりないんだがな……結構一大事だ。
「となるとー……こいつら二人は、それぞれに入れ替わってるということか?」
残りの二人に目を配ると、お互いそれぞれに眠そうに目を擦っていた。何だかんだで似た者同士の二人は同じ動作をするところらへんが双子みたいだった。
「拙者……何がどうなってー……」
「姫様……? 私に、一体何が……」
燐の姿で結鶴の口調。結鶴の姿で燐の口調と、綺麗に分かれていた。
おいおい……これ、皆が起きた時が一番大変だぞ。ていうより、これを治す術を見つけないとマズいだろ……。
そう思っていた矢先、葵がバッと顔をあげた。あ、体的に葵だから〜……つまり、ユキノがだ。
「どこだここはぁっ!! 離せぇっ! ゴルァッ!」
そんな捕われた罪人みたいなセリフで目覚めなくても。ていうか、リビングまで下りてきたのは自分ででしょうが。俺は促しただけだ。
兎にも角にも、葵の姿でそんなセリフはあまり聞きたくなかった。もっとそうだなぁ……。
『だぁいすきっ! 私の傍にいてねっ!』
みたいなセリフが聞きたいものだ。……そんな顔をしないでくれ。これはあくまで男の希望ってなもんだ。
本物の葵は俺の中にいるわけなんだが……うわぁ、すげぇ無表情だな、俺。
「何だっ!? 僕、何かおかしいっ! なんじゃこりゃぁっ!!」
そんな、松田優作ネタを無理矢理しなくても。大袈裟に両手を広げるな、バカ野郎。
「落ち着いて聞け、ユキノ。実はな——」
「あぁっ!! 私じゃんかっ! 何だ! 誰だお前! ていうか、私の体返せよっ!」
「うわっ! ちょ、飛びついてくんなっ!」
いきなり飛び掛ってきた葵の姿をしているユキノにのしかかられる俺。ていうか、顔が葵何だけど——こんな怒ったような表情をする葵は初めて見る。これが葵自身だったらなぁ、なんて思うが。
「落ち着けって! まず話を聞け!」
「うるさいうるさいっ! この偽者〜ッ!!」
「う、うわぁっ!!」
ビリリッ! と、布が破ける音がした。俺は何とかその瞬間、葵の姿をするユキノを追い払った。
「ったく。落ち着けって……ん?」
俺は自分の着ているものへと目を落とした。そこには——服が破かれ、着ているものが二つに分かれて肌が露になっている。
そう、その場所を人は——谷間という。しかし、ツルペタなのかただ広くそこは開けているが、すぐ隣の方には少しの膨らみが。何とかギリギリ胸は見えな——
「み、みゃぁああああっ!!」
「ごふっ!!」
猫みたいな叫び声と共に、俺は視界が揺れたと同時に衝撃は走り、そのまま気絶してしまったのであった。
……不可抗力、だよな?