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Chapter1 【母親】 Episode8 ( No.13 )
日時: 2011/02/19 11:54
名前: メルー ◆f2oDWArF9w (ID: hH8V8uWJ)

 —— 闇のセカイ ——

少女と銀はこのセカイに戻ってきた。
といっても何でも屋である自分達の居場所はここにしかないのが事実。

少女は適当に座ると、どこからか蝋燭を取り出し息を吹きかけた。

それだけで蝋燭に火が灯る。火を使っていなくても灯るのだ。

そして空いている空間にその蝋燭を置く。
少女はこうして怨みが一つ晴らされる事に蝋燭を一つ増やしている。

つまりこの暗闇のセカイで無数に存在する蝋燭は、少女が同じ数だけ怨みを晴らしているという事。

どれだけ晴らしたのか?覚えていない。
いつからやっているのか?覚えていない。

昔の事など何も覚えていない。

それでも少女は何でも屋を続ける。理由も分からず続ける。
それが自分の運命だと、するべき事だと信じているから。



「蝋燭……随分増えましたね。」

少女の後ろに立つ銀が唐突に言う。

「……そうね。」

少女は目の前に広がる蝋燭を眺めながら返事をする。

「このセカイもかなり明るくなりました。」

「……」

「……そろそろが潮時では?」

少女は無言で立ち上がると、前を見据えたまま答える。

「……私はまだ見つけていない。このセカイの真実を。」

そして歩き出した。
銀はその背中を眺めながら呟く。

「このセカイが明るくなっても…貴方の……ありさ様の心は明るくならない。」


 — ありさ —
そう呼ばれた少女は聞こえないフリをした。
銀はため息と共にありさの後に続いて歩き出す。


Chapter1 【母親】 END