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Chapter1 【母親】 Episode2 ( No.5 )
日時: 2011/02/13 13:29
名前: メルー ◆JwfPipxP2. (ID: e8wVXKbC)

ここは暗闇。

陽が昇る事なんてまずない暗い闇。
あの世でもなくこの世でもない暗い闇のセカイ。


このセカイの光は蝋燭だけ。

だけど怖くはない。見渡す限り蝋燭が灯っているのだから。
そして この暗い闇のセカイに何でも屋と呼ばれる人がいる。


17,8歳くらいの少女が一人横になって眠っている。

長く伸ばした黒い髪。
透き通る様な白い肌。
作られた様に整った顔。

雰囲気もそうだが存在そのものが現実味の無い感じがする。


その少女は横になりながらゆっくりと目を開けた。

   —— 赤い瞳 ——

恐怖を感じさせる様な赤い瞳。
少女はしばらく横になってその瞳で暗闇を眺めていたが、起き上がり何かを呼んだ。

「……銀。」

「はい。」

その瞬間少女の傍から突如別の誰かが現れ、少女の呼びかけに答える。

「……銀。依頼は来ている?」

「はい。」

『銀』と呼ばれているその男は20代ぐらいの格好良い青年だった。名前の由来は、蝋燭の光を綺麗に反射している銀色の髪の毛だろう。

銀は着ているジャケットのポケットから葉書を取り出し、丁寧に少女に渡す。

「強い怨みを感じます。」

そう一言付け加えて。

少女は無言で受け取り、しばらく眺めてから呟いた。

「……ねぇ、銀。」

「はい。」

「……人間はいつまでこんな事を繰り返すのかしら?」

「……私には分かりません。」

「……そう。」

少女は葉書を右手に立ち上がり、先の無い暗闇へと歩いていった。
銀は少女の後ろを静かについていく。

そして 現れた時と同じ様に突然消えた。今度は二人一緒に。