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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Chapter1 【母親】 Episode3 ( No.6 )
- 日時: 2011/02/13 16:51
- 名前: メルー ◆f2oDWArF9w (ID: e8wVXKbC)
—— 松谷宅 ——
夜遅く、孝太は一人でアルバムを見ていた。
母さんが自殺してから毎日見ている。
母さんとの思い出を忘れないために。
父さんへの怨みを忘れないために。
毎日同じアルバムのページを捲っている。
孝太の手がある写真で止まる。
どこで撮ったかは忘れたが、母さんと孝太と父さんが笑顔で写っている写真。
どこから見ても仲の良さそうな家庭そのもの。不幸とは縁の無さそうな写真だった。
孝太は写真の母親の顔に触れる。もちろん温もりなんて欠片も無い。
だけど、現実で触れる事が出来ないのだから仕方が無いのだ。
そう思うと涙が出てくる。
涙を抑えられない。
一粒…また一粒と涙の粒が写真の上に落ちていく。
「……思い出は大切なモノ。」
いきなり孝太の後ろから声がする。
もちろん両親がいない今、この家に孝太以外の人はいない。
孝太は恐怖を感じながらゆっくりと後ろを振り向いた。
「……」
そこには少女がいた。
黒い長髪、白い肌、整った顔、赤い瞳の少女がいた。
「だ、誰?」
孝太は唇を震わせながら聞くと、
「……私は私。他の何者でもない。」
孝太は答えに困り質問を変えた。
「じゃぁ、どうしてここにいるの?」
「……貴方が呼んだから私はここにいる。」
最初は意味が分からなかったが、孝太は気付いた。
この人こそが——
「…もしかして……何でも屋…さん?」
——何でも屋なんだ。
少女は無言で首を縦に振った。
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