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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Chapter1 【母親】 Episode5 ( No.8 )
- 日時: 2011/02/15 19:28
- 名前: メルー ◆f2oDWArF9w (ID: 0giHCmeh)
—— 駅 ——
夜遅く
一人の男がいる。
見た目は40代ぐらい。名前は孝三[こうぞう]。
孝太の父親だった人で、他に女を作り妻を捨てた人。
今からこの男には
—— 怨みの裁きがくだる ——
孝三は酒によっている。先程まで居酒屋で盛り上がっていたのだ。
千鳥足でフラフラしながら電車を待っている。
そんな孝三の後ろには少女の姿がある。
孝三は気付いていない。
少女の存在だけでなく、これから少女に裁かれる事も。
「ねぇ、おじさん。」
少女が話しかけた。
「ん?私の事かい?」
孝三は少女の存在に驚きながらも笑顔で応じる。
酒がまだ体にまわっていて機嫌が良いのだ。
「そう。貴方の事。」
「そうか私の事か。くくく…」
孝三は意味も無く笑う。
「で、お嬢さんはこの私に何の用かな?」
「……貴方に伝言があるの。」
「伝言?」
「……そう。伝言。」
「誰からか分かるかい?」
「……貴方の……息子から。」
孝三の表情が一変する。酔いも醒めたようだ。
「私に息子……子供はいない。」
「いいえ。正真正銘貴方の 息子 から。」
少女は息子という所を強めた。
「黙れ!私がいないと言ったらいないんだ!」
「貴方が否定してもあの子の存在は消せない。」
「黙れと言っているんだ!!」
孝三はとうとう切れて、少女に掴みかかったが、
—— ど…て? ——
孝三は動きを止めて、周りを見渡す。
気のせいか声が聞こえた気がしたのだ。
本来なら聞こえてはならない声が。
だが、いくら周りを見ても自分と少女以外に誰もいない。
孝三は安心して少女に向き直る。
「どうして?」
そこに少女の姿は無かった。
あったのは孝太の母親でもあり、自分が見捨てた妻の姿だった。
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