ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 亡国の姫君 =END WORLD= ( No.13 )
- 日時: 2011/03/02 19:38
- 名前: 彰緋 ◆xPNP670Gfo (ID: cPRWXRxr)
「ぁ…………」
今、何か大きな声が聞こえた。なんだろう……そして、ここは……
「………っ!?」
少し思い出した、あのとき変な青年に会って、それから--------
「あら、やっぱり起きちゃった……大丈夫?具合はどう?」
「え…………」
何がなんだか分からない。しかし、少し頭がズキズキしていた。ほんの少しだけだけど。
「あなた、ライに運ばれてきたのだけど……覚えてる?」
瞬間、全て思い出した。そうだ、王宮から逃げてここの国まできた途中、ライとかいうやつと戦って……
「あ………私っ!!」
「あぁ、そんなに慌てないで?大丈夫。王宮になんか渡さないから。とりあえず、これ飲んで?」
ふわりと微笑む彼女の手元には、美味しそうなスープがあった。表情からして、何か安心できたセラはおそるおそるスープに口をつけた。
「………おいしい……」
暖かいスープが口の中だけでなく、体も心も徐々に温まるのを感じた。
それはスープだけではない。彼女の笑顔が似ていた。最愛の妹と。屈託なく笑った笑顔はいつも私を励ましてくれた。
なのに-------
「…………っ」
ふいにセラの瞳から涙がこぼれ落ちた。
レイラはそれに驚くこともなく、優しくセラを抱きしめて、幼子をあやすようにして頭をなでた。
「大丈夫。ここで、全て話していいの。吐き出してしまえばいいの」
優しい母のような言葉に緊張の糸の切れたセラは大声で泣き出した。それでもレイラは頷きながら強く、優しく抱きしめてくれた。
「おい、どうする?」
そっと様子を伺っていたラックスがアシルに言った。
「まだ普通の女の子だと、俺は思うがな」
ふっと目を閉じて言ったラックスの呟きに頷いたライもそうだな、と一言だけ言う。そして、二人はアシルのほうをちらりと見る。
そして………
「……………不本意、だが仕方あるまい」
ため息混じりに吐き出したぶっきらぼうな言葉だったが、二人は顔を見合わせてにっと笑った。