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Re: 亡国の姫君 =END WORLD= ( No.14 )
日時: 2011/03/02 20:23
名前: 彰緋 ◆xPNP670Gfo (ID: cPRWXRxr)

第五話 幸せのカタチ

声が枯れるまで泣いたセラは今までの事を全て彼らに話した。
頷きながら聞いてくれるレイラやラックス、ライには多少の不安は打ち解けた。しかし、ただ一人……アシルだけは無関係のようだった。

「それで、ここに来たの………」

ほぅと息をついたレイラはまだ震えているセラの手にそっと触れた。

「ここは、みんな優しい人よ。アシルもああだけど、いずれいつもの彼に戻るわ。だから、怖がらないで、ね?」
「そうだぞ?なんでも俺達に言っていいんだからな!」

レイラとラックスが笑顔で慰めてくれる。それだけで、また心が暖かくなった。

「それじゃ、次は俺逹の番だな。ほい、レイラから自己紹介。詳しくな」

ライがレイラの方向をむく。

「私はレイラ。いつもは街で働いてるんだけど、急な要請のときは警備隊として働いてるの。よろしくね」
「俺はラックス。まぁ、幹部の中では一番年上だな。気軽に接してくれて構わないぞ!よろしくな」
「俺は………ライ、だ。もう言ったけどwまっ、特に話すこともないしよろしく」

三人が順番に自己紹介を始める。アシルだけは先ほど、一人で出て行ってしまった。
何故、自分を嫌っているのかは分からない。でも、確かに敵国の王女と呑気に自己紹介などして戯れているのが気に入らないのかも知れない。

「さて、そろそろ晩飯の時間じゃね?もう腹減った〜…」

ラックスがとぼけた様子で口を開く。それは何日もまともなものを食べていなかったセラも正直、思っていたことだった。

「そうね………それじゃライ、手伝って」
「なんで俺!?ラックスがいるじゃん!」
「いいからとっとと来る!」

がっとライの首根っこを掴んだレイラは何を作るか考えた様子で、ライの不満は一言も耳に入らなかった。

     *    *    *

夜--------久々にありつけた食べ物を綺麗に残さず食べたセラは早々にベッドに入った。そして、いつしか頭痛は消えていたのに初めて気づいた。
そのとき、部屋のドアが開いてレイラが入ってきた。手には暖かいミルクを持って。

「眠れないだろうと思ったんだけど……」

必要ないかな、と苦笑する彼女にそんなことない、と返したセラはミルクを手にとってため息をついた。

「一つ、聞きたかったことがあるの」
「なあに?」

セラは今まで疑問に思っていたこのを口にした。

「どうして、敵国の王女を受け入れてくれたの?このままいたら、皇帝に見つかってレイラも危ないでしょ?」

すると、レイラは一度目を見張って天井を仰いだ。

「それはね、あなたを見て分かったことがあったの。その瞬間、この娘は守ってあげなくちゃと思ってしまったの」
「分かったことって?」
「それは、ひ み つ♪」

はぐらかして教えてくれないレイラを一瞥してセラは布団に潜りこんだ。

「昔、母さまと妹で話したの」

声が震える。でも、何故か伝えたいと思う。この人には……

「幸せってどんなものなんだろうって。形なんかあるのかなって。あるとしたらどんな形なのかなって」

レイラは、ただ初めて会ったときのように頷いて聞いてくれている。

「そしたら、母さまが〈形なんて、なくていいの。強いて言うなら幸せは「光」なんだと思うわ〉って……その意味なんて全然分からなかったけど……今はっ…いま、は……」

次第に声が小さくなっていく。震えて上手くまとまらない言葉でもその気持ちはレイラにも届いた。

「………………分かる気がするの」

そうして、それっきり言葉を発するそとなく、規則正しい寝息がセラからこぼれた。

「光、か……そうだね」

そう密かに呟くとレイラは部屋を後にした。