ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 亡国の姫君 =END WORLD= ( No.16 )
- 日時: 2011/03/05 09:11
- 名前: 彰緋 ◆xPNP670Gfo (ID: cPRWXRxr)
第六話 求めるもの
暗い。すべて闇に覆い尽くされて何も見えそうにない。
「寒い………」
その闇の中にいた少女……セラは無意識に両腕をさすった。
そこである疑問が浮かぶ。これは夢だ。それなのに、寒さを感じる。
おかしい、と思ったそのとき、前方に仄白い光が二つ漂う。
見覚えがある。いや、そんなものじゃない。知っている、何か。この光は……
「……セ……ラ……セラ!」
はっと瞼をあげると、そこにはレイラの姿があった。
「もう朝よ?大丈夫?」
「平気………」
未だに重い体をよいしょ、と起こして周りを見渡す。そうか、今は私エルフォード国にいるんだ。
その表情から何かを察したらしいレイラは苦笑し、顔を洗っておいでと一言いいおいて部屋を後にした。
顔を洗って、リビングのほうに行くともう三人は食事を始めていた。
「おはよう。よく眠れたか?」
にっと笑うラックスに一つ頷いて椅子に座ると、スープとリゾットが置かれた。
「ん?なんでセラだけ違うんだ?俺らはパンじゃん。これ作ったのアシルだろ?」
一つの疑問をライは口にする。レイラもラックスも気になった様子でアシルのほうを見る。
「まだ、完全に調子が戻っているわけではないのだろう?ならば、軽いもののほうが食べやすい。しかし、野菜もとらないといけない。故にリゾットに野菜を混ぜて……」
スラスラと自分の作った料理の説明をするアシルに、皆驚いて目を見張った。
あの無口なアシルが料理でここまで饒舌になれるとは。長年の付き合いでもあったラックスやレイラも気づかなかった。
「あ……ありがとう……ございます」
なんとか話を遮って、永遠に続きそうな解説を終わらせたセラはスプーンを手にとる。
「おいしい………」
今まで王宮の料理だったにも関わらずおいしいと感じてしまっている自分にも驚きながらも、密かに心を配ってくれているアシルにセラは思いを馳せた。相当嫌われていたものだと思っていたので少々……いや、かなり意外だった。
「セラ、あなた…確か久遠の宝を手に入れたくてここにきたのよね?」
「あ…………う、ん」
いきなり真剣な面持ちで話を切り出すレイラに、こくんと頷いたセラは何か焦燥感のようなものを感じた。
「あの、皇帝がなぜその久遠の宝を欲しがっているか、分かるか?」
「え………」
そういえば何故だろう。誰か大切な人でも失ったのだろうか。しかし、彼女の予想は大きく外れた。
「あの宝は死ぬる「物」…または「者」を生き返らせることができる。しかし、それだけじゃあない」
「……………」
ならば、何ができるのだろう。皇帝はそれ
を使って何を………
「あの宝はな、生きとし生けるもの全てを滅ぼすことも出来る」
「…………!?」
セラは絶句した。そんなこと、全く知らなかった。
繋がった。だから、母はあんなにも敵の手にこの宝を渡すまいとして、この宝の道順である秘宝を私に託したのか。
「だから、今俺たちはその宝を一刻も早く手に入れてしまわなければならない……この国を。世界を滅ぼされる前に」
そこでライは一つ息を吸ってセラのほうへ向きなおる。
「力を貸してほしい。お前も必要なんだろ?祖国のために」
セラは目を見開く。祖国のためにもなる……もう一度、幸せな王国を……
「分かった。この秘宝はどんなのだか詳しくは知らないけど、求めるものは一緒なんでしょ?」
凛とした声で約束したセラに、アシルを除くその場にいた幹部がよかった、といった程でひとつため息をついた。