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Re: 亡国の姫君 =END WORLD= ( No.18 )
日時: 2011/03/05 23:59
名前: 彰緋 ◆xPNP670Gfo (ID: cPRWXRxr)

第八話 エルフォードの魔女

仄に輝くる二つの光。また、この夢だ。
始めに見てからもう何度目だろう……
セラは光へ手を伸ばす。しかし、決して触れることはできない。まるで炎のようだが熱くはない。むしろ、冷たい。
このまま朝を迎えるのだろうか。そう思っていたとき、いつもとは違う…何か不安感がよぎった。冷たい汗が背筋をつたい、ここは危険だと全身で警戒しているのを感じた。
そのとき---------

「……………」

背後にある老婆が立っていた。見覚えがある。そう……あの日に会った、宝を手に入れろと言った老婆。
何か小さな声でブツブツ呟いている。気味が悪くなったセラはその場から逃げようと、後ずさりする。すると、その老婆はある女性に姿を変えた---------

   *     *     *

「…………という夢を見たの」

今朝見た夢を、幹部の三人に話すと明らかにラックスとレイラの表情が変わった。ライも眉間に皺をよせる。

「あぁ……えっと……それってなんか姿はお婆さんなのに、声が若かったりする?」
「はたまた、その女性になった姿の髪の色が銀色だったりとかは……」
「あぁ、そういえばそんな人だった」

ラックスとレイラの言うことが、見事に的中したので、セラは目をみはった。
対する三人は、顔をこわばらせている。アシルも、普段顔に出さないのに険しさが宿っている。
すると、ライが席を立って戸棚から古ぼけた一冊の本を取り出した。

「お前が言ってるの、もしかしてこんな人か?」

ページをめくっていくと、一つの絵がそこにはあった。銀色に輝く髪をなびかせ、天女の如くに美しい。手には杖を持っており、髪飾りをたくさんつけている。そう、この絵の人物こそ………

「この人っ!この人がでてきたの!」

夢に出てきた老婆の変化したあとの姿そのものだった。
そこで、ライがおもむろに口を開く。

「この人は、かつてエルフォード国に仕えていた、魔女だ。伝説として、な。ほら、ここに書いてあるだろ?」

指で示すとそこには、その魔女の伝説から容姿、全てが記されてあった。

「しかし、この伝説はもう、五百年も前の話だ。お前がこいつに会ったっつーのは……」

ありえない話だ。それに、あのときは意識も朦朧としていたし、幻覚だったのかもしれない。そう考えがよぎったが、実際に夢にも出てきた。一体どういうことだろう。

「まぁ、とりあえずこの件はおあずけ。そろそろ出ないと、まずいわよ?」

レイラが時計を指してライとラックスのほうを見る。

「うぉっ!やっばぁ……と、とにかく行くぞっ、ライ!」
「あ、あぁ。セラ、お前はあとでレイラと来い。レイラ、任せたぞ!」

駆けるようにして飛び出していった二人を見て、しばらく呆然としていたセラもクスクスとこらえられなくなったようにして笑った。
レイラはそれを見て頬を緩ませる。ここに来てから、この娘はずっと笑わなかった。少しは慣れてきたのだろうか。ともあれ、それはいいことではある。このまま気が楽になっていてくれればいいのだか。

「セラ、今日は私と行きましょう」
「う、うん」

こくりと頷いたセラはいそいそと自室に戻って行った。