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Re: 亡国の姫君 =END WORLD= ( No.28 )
日時: 2011/03/16 02:50
名前: 彰緋 ◆xPNP670Gfo (ID: 9nPJoUDa)

第十二話 ヴィルデの石

ライから、全てを……額の傷以外の事を、聞いた幹部の三人はそれぞれ表情に険を宿していた。

「まさか、伝説だと思っていた魔女が出てくるとはな」
「なんてったって五百年だものね……」

昨日まで、その存在をほとんど信じていなかったため、その事実は彼らに驚愕を与えた。

「あぁ、だが見た目はレイラ、お前くらいだったぞ?」

そう。何百年と年を重ねているにも関わらず、今目の前にいる16歳の彼女とさして変わらなかった。

「しかし、ここまでの事実があるのだから、存在を否定することはできまい」

アシルがいつもと変わらない口調で話す。これに頷いた他の三人は、しばらく沈黙したままだった。

    *     *     *

「メイリ様、寒くはありませんか?」

半分、追い出されるようにして部屋へと押し込まれた、セラとメイリは、布団にもぐりながら話しをしていた。

「いいえ、大丈夫です。それと、セラ様……あの、この状況ですし「様」はつけなくて結構ですよ?」
「そうですか!……では、メイリさ…じゃなくて、メイリもセラと呼んでください?」
「では、そうさせていただきます」

苦笑しながらも、二人は昔からの友人のようなものだったので、二人の会話は、敬語を使っても、堅苦しい会話ではなかった。

「そういえば、セラはなぜここに?」

隣国のリンシア国の王女、セラは処刑されたと聞いていた。しかし、こうして目の前にいるのは正真正銘のセラだ。

「そ、その……実は、探しものをしていて……」
「探しもの?」

先ほどより、歯切れが悪くなったように感じる。探しものとはなんだろう。そう、問いかけると、彼女は困ったようにしてここに来た全てを語った。

「久遠の宝………ですか。少し、聞いたことはあります」
「えっ、知ってるんですか?」
「はい。母が少し……なんでも、それはもともと一つの石だったらしく、エルフォードの魔女が四つに分けて封印した、と」

セラはその魔女の名が出てきたことに絶句した。そこまでは知らなかった。そういえば、この家に前ライが見せてくれた本があったはず。あれに載っているだろうか。

「よく、ご存知で………」
「聞いた話なので、本当かどうかは……それらは、ある道順となる石と接触させると黄金色に輝くのだとか………あっ!」

突然、目を見開いたメイリは自分のしている緑の色のペンダントに触れた。

「まさかとは思いますが……セラ、あなたのペンダントの石、少し貸していただけませんか?」
「は、はい。どうぞ?」

セラは、恐る恐るペンダントの石を外すと、それをそっとメイリに渡した。
すると、その二つの石が玲瓏の響きを打ち出し、メイリの緑色のペンダントが金色に光った。

「やっぱり……!」
「え、えぇぇぇぇ!?!?」

思わず声を上げてしまったセラは慌てて口を抑えた。すると、そこにライ達が駆け込んできた。

「な、なんだ?なんか、今すごいすっとんきょうな声が聞こえたんだが……」
「ちょ……これ、メイリの、こっこのい、いぃ」
「さっぱり分からん」

アシルは、呆れた表情で変わりの説明をしてもらうべく、視線をメイリに移した。

「悪いが、説明してもらってもいいか?」
「は、はい」

未だに心臓の音が大きくなっているのを自覚しながら、なるべく冷静にと心掛けて彼女は言った。

「このペンダントの石は、誕生日に母からもらったものなのですが……何か不思議なものを感じながら、綺麗なのでこうしてお守り代わりに持ち歩いていたのです。この石………実は……」
「実は……?」

ごくりとラックスの唾を呑む気配が見て取れた。

「久遠の玉の一つ……ヴィルデの石でした……」

          間。

「「な、え、えぇぇぇぇ!?!?!?」」

真夜中のユリアルの街に、ラックスとライの驚きの声が響き渡った。

     *     *     *

窓から外をぼんやりと見ていた、美しい女性……エルフォードの魔女と呼ばれる彼女は、誰もいない部屋の中でふぅっとため息をついた。
つまらない。何もすることがない。
一応、この身は皇帝陛下のお膝元にある。が、とにかくつまらない。
何も面白いことがないし、やることがない。このままばっくれるのもありか……

「この生活もそろそろ飽きてきたしな〜………っ!?」

そう呟いた瞬間、彼女の華奢な肩がぴくりとはねた。そして、と頬を赤く染めて楽しそうに笑う。

「へぇ……なんだか、面白いことになりそうね………♪」