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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 亡国の姫君 =END WORLD= ( No.5 )
- 日時: 2011/02/24 18:41
- 名前: ユフィ (ID: cPRWXRxr)
あの日、神聖エルフォード帝国はリンシア国のある「秘宝」を欲して宣戦布告した。その「秘宝」は、選ばれし者にだけ手にすることができ、それは“神の落とし物”と呼ばれる久遠の宝の道順となる。
その宝を用いれば死した“物”、あるいは“者”を蘇らせることができる。
しかし、エルフォード国が求めていた「秘宝」は手に入ることが出来なかった。
そのために。そんな我欲のためだけに、何百と…何千との人間を殺して。土を、風を、すべて殺して。
最後に見た大切な妹は笑いながら。しかし、目に涙をためながら自分に「逃げて」言った。兵士も、民もみんな私に「生きろ」と…。そう言って私は逃げ出した。
エルフォード国が欲した「秘宝」と共に。
* * *
昔の、まだセラが幼かったころ。
「………?」
いぶかしげに首を傾げるセラにある女性は言った。
「いい?これは、この国の秘宝と言われるもの。これをあなたに託します。絶対に誰にも渡していけませんよ」
「………?……はい」
いまいち彼女の言うことを理解できていないセラだったが、何やら心得がいったように短く返事をした。
すると、女性は儚く笑ってその「秘宝」を……薄翠に光る石を紐に通してセラの首にさげた——
* * *
必要だ。あの久遠の宝が。
あの日、逃げた直後ある老婆と出会った。
すでにボロボロだった私を見て薄く笑った老婆は言った。
——この国を、もう一度かつてのように理想郷とさせたいのなら——
手に入れればいいと。久遠の宝を。
行く先は分からない。しかし、なぜか自然と足が西へ向けられる。もう動かなかった足が軽くなってそこへ行かなければいけないような衝動に駆られる。
もう一度、あの国を、人々を。
そして———
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