ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 亡国の姫君 =END WORLD= ( No.6 )
- 日時: 2011/02/20 21:01
- 名前: 彰緋 (ID: cPRWXRxr)
- 参照: ユフィ→彰緋(あきひ)に変えました。宜しくお願いきます♪
第二話 刻まれし縁
ガヤガヤと賑わい、威勢の良い声が聞こえてくる。
あれから、ずっと歩き続けてもう一週間となった。途中で休憩を挟みながらもここまできたセラだったが、もう体力も限界だった。
気がついたら、ある街に出ていてたくさん人が自分を見る。当然だ。こんなに服も汚れてボロボロなのだから。顔はフードで隠しているので見えないが、それでも不安になる。もし、自分がリンシア国の王女だと知れれば——
「おい、そんなところで何をしている?」
「………!」
いきなり青年に声を掛けられたセラは大きく肩を震わせた。いけない、このままでは……
「お前、何者だ……っ!?」
セラは腰に差した剣を素早く引き抜き相手に切りかかる………が、相手の青年も剣を抜いて表情を引き締める。
「お前、素人ではないな。相当剣術には長けているが……!」
「………っ!?」
一瞬で間合いを詰めてセラに切りかかった青年だったが、セラも負けてはいない。
髪一筋でよけた直後に体制を立て直して首筋を狙う。
「……まさか、“ヘルフレア”の俺とここまでやるとはな。お前、本当に何者だ?」
「……答える義理はない」
セラが短く返事を返すと青年は剣を鞘におさめた。
「そろそろ終わりだ。お前、「女の子」だろ?」
「……!?」
見破られた。フードをかぶっているはずなのに。
いまだに剣を構えているセラに対して青年はフッと笑ってセラのフードを剥ぎ取った。
「やっぱりな」
「なっ……!?」
思わず絶句して、青年の顔を見上げるとその表情は笑っていた。
それも信じられないといった程で目を見開くと、やがてこらえきれなくなったのか、青年は声をたてて笑いだした。
「何がおかしいっ!?」
必死になって問いただすセラに青年はやがて真剣な面持ちで呟いた。
「お前、これから俺の家に来い。俺はライだ。この国の警備隊の幹部をやっている」
「何を言って……!?」
「お前、ずっと何も食べてないだろ?それに……」
ずいっと顔を近づける青年……ライは小さく呟いた。
「あんまり、人に見られるとまずいんだろ?お姫様……?」
「なっ……んっ……!?」
明らかに狼狽するセラを見て、再び微笑んだライは軽々とセラを抱き上げて家路に向かった。
「降ろせ!お前、私をどうするつもりで……」
「どうするって……そんなんだとお前死ぬぞ?」
「お前なんか信用してないっ!降ろせ!」
必死にあがくセラだが、彼の腕力には到底かなわず、ぎゃいぎゃい騒ぐ始末だ。
彼も涼しい顔でセラを運ぶ。
このとき、もうすでに運命の歯車は回り始めていたことを、彼女等はまだ、知る由もなかった———