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Re:      ( Fly . )  、 短編集* ( No.2 )
日時: 2011/02/17 17:12
名前:  天音、 ◆wkTL.Kzd2I (ID: 5RAlDtaS)

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1時限目が始まった。羽月は窓側の後ろの席で、全然目立たない場所にある。初めから目立たない羽月だったが、はじっこになって、もっと目立たなくなってしまった。
今日の日付は16日。羽月の番号は16番。羽月の担任は、日付の番号の生徒にあてると言う癖があった。
でも羽月は、一度もあてたれた事がない。居ると、気づかれていないからだ。
丁度窓辺の席なので、春には満開の桜が咲く、木の上を見ていた。
あの桜の木には、誰にも気づかれない小鳥の巣があった。あそこに巣があると知っているのは、多分羽月ぐらいだろう。

「 次の問題は——…今日は16日か。16番は誰だ ? 」
「 先生、柊さんです 」

生徒のひとりが担任の問いにすぐさま答えた。実際にはいる羽月だが、この際黙って聞いていた。
そして担任が、生徒の答えに返した。

「 そうだったな。じゃあ、17番、答えろ 」
「 げー、何で来ねえんだよ柊 」

いるのに。本当は居るのに。
影が薄いと言うよりもっとひどいわたしは、この世に必要なの?
と、羽月は心の中で叫んだ。心の中でしか叫べない想いを、ぶつけたいのはやまやまだが、そんな気持ちを必死にと抑えた。
羽月は誰にも気づかれない小鳥の巣を見た。

私は幽霊。——…あなたも幽霊?

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