ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ( Fly . ) 、 短編集* ( No.3 )
- 日時: 2011/02/17 17:26
- 名前: 天音、 ◆wkTL.Kzd2I (ID: 5RAlDtaS)
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休み時間の予鈴が鳴った。男子生徒はサッカーボールを持って外へと駆けて行ったり、教室で走り回ったり、とにかく自由な時間だった。
そんな時、羽月も男子の流れのはじっこに混ざって、校庭へと向かっていた。
外へ出ると青空が羽月を迎えてくれた。冬には良く見える、雲ひとつない綺麗な空をしばらく見つめていた羽月は、ふいにどこかへと歩き出した。
羽月が向かったのは、一本の桜の木の下。上を見ると、見覚えのある生徒がじゃれあっているのが見えた。
そう。此処はついさっき羽月が見ていた桜の木。桜の下には、枯れた葉が所々に落ちているのが気づく。
そして木には小さな蕾。これを見ると、もう春が近付いているんだ、としみじみ思う。
そんな羽月は、上を見上げた。
「 小鳥さん、小鳥さん。寒くないのかしら ? 」
羽月はひとりごとのように一匹の小鳥に話しかけた。まるで羽月の言葉が分かっているかのように、小鳥はチュン、と鳴いて返した。
その時羽月は、足元に小さな動くものがあったのに気がついた。
それは小鳥だった。雛だろうか。とても小さく、少し暖かく感じた。
ああ、巣から落ちたんだな、きっと。羽月はそう思い、小鳥を抱いた。
「 待っててね、今お家に返してあげるわ 」
そう羽月は呟き、小鳥を包んでいる両手を上に差し出し、下にあった木と木の間に足を掛け、登ろうとした瞬間
『 優しいのね 』
どこからともなく声がした。とても優しくて、風で包んでくれそうな、暖かい声。
羽月は、( 空から聞こえた )と思いこみ、空を見上げた。そこには——…。
『 …気づいた ? 』
浮かんでいる少女が居た。顔は幼く、体もまだ伸び盛りな、小学生のように見えた。しかし浮いている。
リアル幽霊?羽月はそう思い、一歩下がった。
『 怖がらないでよ。別に呪ったりしないから 』
そのひとりの幽霊の声に、羽月はちょっとばかし安心し、肩を下げた。
小学生なのに、死んじゃったの、この子…。
羽月はそう感じ、少女の足に手を伸ばした。
すると手はすうっと少女の足をすりぬけて空へとのびていた。
「 あなた…死んでるの ? 」
羽月が尋ねたら、少女はくすりと笑った。
私は幽霊。 ( あなたも幽霊。 )
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