ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ( Fly . ) 、 短編集* ( No.4 )
- 日時: 2011/02/17 17:50
- 名前: 天音、 ◆wkTL.Kzd2I (ID: 5RAlDtaS)
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『 仲良くしてね 』
あの後、少女は羽月にこう告げて、どこかに消えて行った。
一体何だったの?羽月は夢のように思い、頬をつねってみたが、凄く痛かった。
少女の名前は美羽と言った。どこかで聞いた事がある、と羽月は思った。誰か身近な人が、同じ名前だったような気がすると。まあいいや、と羽月は歩き出した。手の上にあった雛は、いつの間にかいなかった。
もうすぐ2時限目を告げる予鈴がなる。早く帰らないと。羽月の足取りはだんだんと早くなっていった。
そんな羽月を後ろから見ていたものは、空に浮いていたのだ。
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鐘が鳴り、生徒がガタガタと席に着く。羽月はなる前には座っていて、静かに本を読んでいた。
担任がガラっとドアを開け、教卓の前に立った。すぐさま日直が号令を掛け、授業は始まった。次の授業は英語だ。
羽月は英語の教科書を出し、頬杖をついて、窓の外を見た。そしてそこに、驚くべき光景があった。
桜の木にある小鳥の巣に、美羽が居た。そう、さっき羽月の前に現れた、あの幽霊少女だ。
美羽はどこかに隠してあったのか、小鳥を取り出し、巣へと返していた。あの鳥は、確か羽月が先ほど、拾ったものである。いなくなった理由は、美羽が羽月の手から取ったのだ。
この光景には、羽月は口をあけて見ているだけだった。開いた口がふさがらないとは、まさにこの事だろう。 その時、美羽は羽月に気づき、羽月の方へと視線を向けた。
羽月は驚き、ついつい黒板に視線を戻してしまった。と言うより、目をつぶってしまった。そんな羽月に美羽はくすりと笑い、どこかへと動き出した。
どこかへ行ったかな?羽月はそっと目を開き、前も見ずに窓の方に視線を向けたが、誰もいなかった。
ほっとし、前を向いた羽月は、またもや驚いた。
『 もう、何で無視するのよ 』
そう、目の前には美羽が居たのだ。ついさっきまで窓の外に居たのに…幽霊だから、窓をすり抜けて入ってきたのだろう。
夢じゃない…夢じゃなかったんだ!
「 あ、あなたは誰なの ? 」
羽月は誰にも気づかれないように声をあげた。
すると美羽はこう答えた。
『 あなたと、凄く身近だった人 』
わたしと、身近だった人?確かにいたけれど、誰か思いだせない…。
羽月は悩んだ末、美羽にこう尋ねた。
「 あなたは何故、わたしの前に現れたの ? 」
尋ねたが、美羽は答えず、逆に羽月に尋ねた。
『 変わりたくない ? 』
そんな美羽の言葉に、羽月は驚いた。
変わるとは、何なのかと思う人も多いだろうが、羽月はすぐ感づいた。自分が変わりたくない?そういう意味だろうと。
羽月は美羽に、こう返した。
「 変わりたいけど、変われないのが現実ってもんなのよ… 」
そんな羽月に、美羽は言った。
『 あたしと、約束して 』
「 え ? 」
『 卒業まで、友達を作る事。誰にも、頼らなずに ! 』
その美羽の言葉に、ただただ驚いた羽月だったが、美羽に決心を伝えるように言った。
「 作ったら、あなたが誰なのか教えてくれるね ? 」
そう言うと美羽はうん、と頷き、またもやどこかへと消えて行った。
しかしもう羽月の決心は変えられない。
自分を変える。こんなわたしとは、もうおさらば。
私は幽霊。あなたも幽霊。——…前まで幽霊。
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