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Re: 巡ツテ地獄 ( No.2 )
日時: 2011/02/18 17:51
名前: 毒を食らわば皿まで ◆jS4UFL/cLE (ID: gwrG8cb2)

「お黙りなさい!!」
か細い大声で怒鳴る。だが、その程度で艶香は怯みはしない。

「……でも、貴方の父母の事はよく覚えてるわ」
不意に艶香はこう言う。蘭姫も少しは話を聞く気になったのか、艶香の方を向く。
「私の足元に跪いて『娘だけは、蘭だけはどうか助けてくれ』と縋って懇願したのよ」
ふふふ、と上品で非道な笑い声が響く。

「黙りなさい、黙りなさい! お父様を侮辱する事は許しません!!」
目に涙を一杯溜めて、頭を左右に振り、そう喚く。
「『許さない』からどうするの?」
その続きを愉しみにしているようだった。死に恐れなどない。そう瞳が告げていた。

「っ……!!」
胸に隠していた小太刀を抜き取り、降り下ろそうとする。だが、彼女にはできない。
心優しき姫には、人を傷つけるなどできない。だが、艶香はそれを嘲笑う。
「如何したの。この胸に刺せばいいのよ。そうすれば憎い相手は死ぬのよ。復讐は成功するのよ」
言葉で散々甚振って、心に傷を付ける。この行為に悪意を感じる事はない。感じるのは優越感。



「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!」
狂ったように泣き喚く蘭姫。

殺したい、殺したいほど憎い。でも殺せない。殺せたら、どれだけ救われるだろう。

「殺していいのよ……。簡単じゃない。その鋭利な刃物で一突きにすればいいのよ……」
泣き狂う蘭姫を見て優越を感じつつ、尚も蘭姫を挑発する。肌蹴た胸元を自ら小太刀に近付ける。


「このまま力を入れて御覧なさい……」