ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 【瞳の奥】〜shadow moon〜 ( No.5 )
日時: 2011/02/21 18:53
名前: るりぃ ◆.VGogta6H. (ID: opLc/10u)
参照: しばらく放置している間に大変なことになってら

我は黒鋼 夜。
GIグループとかいう会社の跡取り息子だ。
一人称は父の一人称がそのままうつったもの。我の容姿もまた然り。
小さい社長だといわれ、褒められ愛でられ育ってきた。
昔はそれが誇らしかった。
でも、今は……

「うわぁぁぁああああっ!!」

我が妹の絶叫で我に返る。
妹は先ほどまで手に持っていた鎌二本をおとして、あたりに彼岸花のように紅いものを咲かせて。
傍目にみたら、死神にしか見えないであろう今の妹の容姿は、我には曼珠沙華そのもののように見えた。
機械人形の忍、紅の惨殺者、漆黒の悪魔、傾国の美女、様々な通り名で呼ばれた炎のように燃え盛る深紅の瞳を持つ忍、紅 冷嘉を叔母に持ち、翡翠の偽善者と呼ばれた葉を叔父に持つ我が妹、黒鋼 鵺。
叔母の淡麗な容姿と面差しを引き継ぎ、叔父の優しい性格を受け継いだ鵺。
だが、その面差しはまだ何処か幼さが残っており瞳は黒く、どこまでも澄んでいて、黒曜石のようだ。
ころころとよく表情が変わり、どこまでも優しく、甘い鵺。
漆黒の髪は丁寧に手入れされていて、太腿のあたりまで伸びている。
そこまで伸ばしたのは幼いころに我が言った事を忘れていないのだろう。
「お前の髪は長い方が綺麗だ。これからずっと切らないで伸ばせ。」
鵺はその言葉に、はにかんだような、照れたような笑顔でうなずいた。
あの頃の我に戻りたいものだ。
と、呑気に回想にふけっていた時、どさっという何かが落ちる鈍い音がした。
そちらに視線を向ければ、鵺が倒れていた。
錯乱状態だったのだろうか? 疲れていたのだろうか?
まぁ、そんなことはどうでも良い。
とりあえず此処の用はすんだ。鵺を連れて帰らなければならない。
そう思って我は倒れている鵺を抱きかかえた。

Re: 【瞳の奥】〜shadow moon〜 ( No.6 )
日時: 2011/02/23 06:44
名前: るりぃ ◆.VGogta6H. (ID: opLc/10u)
参照: しばらく放置している間に大変なことになってら

鵺を鵺の自室に寝かせてから、我はその部屋を出て、ゆっくりとため息をつく。
鵺は、正気を保ったままでは戦えないが、狂気の中に突き落としてやれば、我にも勝る力を発揮する。
そして、何より、夜は不死身だということ。
鵺は暗闇と霊に愛されている。
だから、本人がその気になれば、霊を自由自在に操れるはずだ。
そうしなかったのは、鵺がその能力を恐れ、封印したから。
全ては封印へと導いた、陽太とかいう奴の所為だ。
あの全てを包む太陽の瞳で、鵺を包んで、連れ去ってしまったあの男。
あの男の所為で鵺はただの一般人になってしまった。
可哀そうな可愛そうな鵺。
でも大丈夫だ。
これからは我が守ってあげられるから。
神様なんて信じないが、この時ばかりはいると信じてやまなかった。

——神様、鵺は我のたった一つの宝物。どうか、もう奪わないでください。

しばらくしてから己の行動を見返し、やはり馬鹿馬鹿しかったかとひとり呟くと、己の書斎へと足を進めた。







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title by…ブドウ:花言葉【宵と狂気】