ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 【瞳の奥】〜shadow moon〜 ( No.7 )
- 日時: 2011/03/03 07:01
- 名前: るりぃ ◆.VGogta6H. (ID: opLc/10u)
次に奪われたのは、兄様でした。
「兄様、兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様!!」
唯ひたすらにそう叫ぶ。
でも、喉が枯れたので叫べなくなった。
「黒影様、それでこの女の処遇ですが……」
「黒鋼本家のごく近縁と言えど力がなければ不要。ご主人様よりこの女の処遇は一任された。」
そこで、黒影様と呼ばれたひとと私の視線がかち合った。
研ぎ澄まされた刀のようなその雰囲気は鋭利で危うくあるけれど、とても魅力的な感じがした。
その顔もとても端正な顔立ちだと思う。
けれど、狂気や狂想、とにかく負に分類される何かがその端正な顔立ちを覆ってしまっているようだった。
すると、何かのつめたい感触が私の顎をすくいあげた。
つい、と差し向けられたそれは、黒影様の刀の白刃。
峰で私の顎をすくっているからして、その切先は喉をとらえていた。あまりに容易い殺人行為。
「誰にも必要とされず、いつ殺してもいい女。」
ただ淡々と私を見つめてその言葉を言った黒影様は、けれど次の瞬間には皮肉げに唇をつりあげた。
酷薄な笑みだった。
刹那、着ていた小袖の襟を掴まれる。顔がすぐそこまで接近し、驚いた次の瞬間にはずるりとした感覚。
舌。舌で首筋を、1番太い血管の通うそこを舐められた。
「……!」
「貴様はこれより私の私物。使い物にならなくなるその時までは死すら許さない。」
覚悟することだ。
そう言った三成様はまた皮肉げに口元を笑ませ、首を甘噛みする。
これはいつでもお前なんか殺せるという意味だろうか。
兄様のように。
兄様……
「私に、兄様なんていたかしら?」
分からなくなった。すべてが白くなった。
そしたら、黒影様が微笑った。
耳元に唇を寄せられ、囁くように言われる。
「兄様なんてお前にはいない。お前の名前は銀 雪。私の所有物だ。」
————それは、本当にあいをうしなったひのこと。
------------------------
title by…サイプレス:花言葉【死、絶望、哀悼】