ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 不良と人形達の奮闘日記 ( No.8 )
- 日時: 2011/02/24 18:59
- 名前: 毒を食らわば皿まで ◆jS4UFL/cLE (ID: gwrG8cb2)
〜Ⅱ〜鏡の国の人形達と俺
「もう出てきていいぞ」
狭いベッドの下で小競り合いしていた人形達が、髪は乱れドレスは乱れて出てくる。
「全く、私たちをこんな所に押し込むなんて、どんな教育をされてるですか。おバカ」
「なっ!?」
人形に「馬鹿」って言われたくねーよ。つか、何だよ、こいつら。
「彼女達は、生命の欠片を持つ人形。生命の螺旋を巻いてもらえば、いつだって動く事ができる」
「ですが、その生命の螺旋はとても繊細。特別な人間にしか確認する事は出来ません」
その“生命の螺旋”ってのが、この指輪ってわけか。
指に嵌められた黒い薔薇の指輪をじーっと眺める。至って普通の指輪に見える。
「その“特別な人間”が、貴方なのですよ」
指輪をマジマジと見つめる俺に微笑みかける。母親のような、懐かしい暖かさを持つような……。そんな微笑み。
「ですが、螺旋を巻かれれば、それは闘いの合図でもある」
「目覚めたら、私達は宝石〈心臓〉を奪い合い、全ての宝石を己の物にすると、限りなく人間に近い人形となれる」
「それまでの道程は苛酷で、多くの命が奪われる事」
「それはとても悲しい事で、でも変える事のできない運命」
人間に近づいて……。何になりたいんだろう。わざわざ殺し合ってまで、何をしたいのだろう。
俺には解らない。解りたくもない。
その時、一体の人形〈ドール〉が口を挟んだ。
「……いいえ、私達、自分を悲しい境遇の人形〈子〉だと思わないわ」
うんうん、と後ろで頷く全ての人形。それを見て満足そうに微笑む亜梨華。
「だって、生きるって闘いでしょう? 私達は闘う事が出来る。だから、生きている事ができる」
貴方だって、何かしら闘いながら生きてる。人間関係でも、会社でも、学校でも、何でもそうよ。
この世は闘いなの。辛い事もあるけれど、生きていると実感できる闘いなのよ。