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Re: 不良と人形達の奮闘日記 ( No.13 )
日時: 2011/02/26 07:23
名前: 毒を食らわば皿まで ◆jS4UFL/cLE (ID: gwrG8cb2)

「く……!!」
直撃は免れたものの、左半身、特に翼はボロボロに壊れてしまった。
「やった〜!」
勝利に安堵した表情の人形達。肩で息をするなんて、まるで本当の人間のようだ。
指輪の熱もすっと引き、その代わり熱の気だるさに襲われる。
「貴方達……、私を怒らせたわねぇ? 次は、どぉなるか解らないから」
悔しそうに吐き捨て、歪んだ鏡から姿を消す。
「だいじょーぶ?」
トトト、と俺に駆け寄ってきたのは真珠石。額に手を当てて、熱を測るようにしている。
「病気なのに無理をさせてしまったね」
女のくせに男みたいな格好いい台詞を言うんだよな……。
「さ、戻りましょう。今までの激しい闘い<バトル>で鏡は罅入っている」
「じきにこの世界は壊れるですぅ。とっとと退散ですー」
俺たちがここに来た方の歪みに入る。浮遊感に包まれて、瞳を開けるとそこは元の世界。

「なぁ、あの鏡の国から戻ってこれなくなったらどうなるんだ?」
そんなに急いで退散することだったのか。鏡の国が罅入ったらどうなるのか。
「鏡の国は魂を好み肉体を嫌う。私達の魂は鏡の国の中、肉体は現実に引き戻される」
「死ぬってことか?」
「いいえ、鏡の国は命を奪うわけではないもの。ただ、廃人となるだけよ」
動く事も、喋る事も出来ない。私たちの螺旋が切れてしまったように、永遠の眠りの中にいるのよ。
「……それ、いいかもな」
ポツリ、と呟いたそれは心からの言葉。心のどこかで自分の存在を嫌っているのか。
「目覚める事が無ければ、出会う事もない。失う事もない……」
俺、何言ってんだ? 自分で自分の抑制ができない。言葉が勝手に出ている。
「何言ってるの〜。そんな事ダメ、ダメなのよ!」
「そうですぅ。人間は出会いや別れにより心の成長が成されるですぅ」
「永遠の眠りとは、暗くて、静かで、目覚められないと知れば恐ろしいものだ」
でも、僕らは違う。螺旋を巻かれれば何度だって目覚める。でも、人間に螺旋はない。
ただ暗い深い眠りの底で、静かなまま、何もないままただ生きるだけだ。

何も見えない、何も感じられない、何にもない。そんな所に自分だけが存在している。
それは悲しい事で、恐ろしい事。永遠の眠りを感じない人間には、解らない事。