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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 斬鬼 ( No.4 )
- 日時: 2011/03/05 15:45
- 名前: まる (ID: 1deg7EE.)
- 参照: 斬鬼とかいてざんきと読みます←てか、わかんなww
第一夜
白い紙を墨で塗りつぶしたかのような黒。いや、さらにそれよりも濃く深い黒。まるで世界が断絶されたかのような、黒い世界が無限に広がっていた。
一歩先さえ、何も瞳が捕らえることはできなかった。音も匂いも何もかもが絶たれ、完全に全てが遮断されている。
少女は一人、深い闇のなかで茫洋と立ち尽くしていた。
右手に刀を携えているのは、何も見えない闇のなかでも、重い感触で確かめることが出来た。
少女は小さく肩を震わせた。じわじわと体を闇が侵食していくような感覚がして、肌が不快に泡立つ。 完全な孤独だと彼女はそう悟り、体の震えを抑えることが出来なかった。
どれほど一人が辛いことか。
何よりも少女は孤独が恐ろしかった。酷く悲しく恐ろしい。
いつから一人でいることに恐怖を覚えたのだろう。
少女は小刻みに震える体を左手できつく抱きしめる。
この世で最も醜く罪深い行為、許されない罪。この世で生きている限り、いや死してもなお許されないだろう。
生きている事が罪か——神が彼女に与えた罰は計り知れない恐怖だった。
決して許されることはないのだ。
同胞を、人を—— 殺した自分には。
「——鈴鹿よ」
突如、擦れた声が背後に聞こえ、澱んだ思考を素早く切り替える。
沈黙を破った声の主はすぐ後ろに居るのだと、背中から重い気配を感じていた。
片手に持つ刀を両手に持ち替え、きつく握り締める。
「鈴鹿よ」
低くざらついた声が聞こえた刹那——瞬時後ろを振り返った。
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