ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 僕らの彗星 【参照400突破!返信100達成!!】 ( No.120 )
- 日時: 2011/04/03 23:14
- 名前: 月夜の救世主 ◆WABCAFs6Hg (ID: rs/hD2VF)
- 参照: 壁とでも話してろ(やーなこったパンナコッタぁ!ポンデライオンーww
「ふぅ……、なんとか着きました!」
時計塔の屋上に着く、パーチェ。町全体を見渡せる。こうして上から見るとここに住んでいる人たちの数が確かに分かる。そして向こう側はうっすらオレンジ色になっている。
「もう直ぐ夜明けですね。ノーテさんが起きないうちに……。」
瓶をフタを急いで開けて、中に入っている薬を確認する。金色に光る粉で散らすのがもったいないくらいだ。貴重な薬なので持つこと自体にプレッシャーを感じてしまう。
「それっ!」
粉を取り出して、街に振り掛ける。満月の光りに反射してキラキラ光っている。すると粉は増殖し、色んなところへ落ちていく。
「あ、だからマティーナさんはたったこれだけでいいと……。」
月の光りを利用し、化学反応を出させ、増殖させる。この街の性質を使ったのだ。ノーテより頭がいいことは確かである。
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「あ、あれ!」
ロッタが時計塔を指差す。時計塔から出てくる金色の粉。紛れもないパーチェだ。3人でガッツポーズ。周りの人々はなんだなんだと時計塔を指差していたり、じっと見つめていたり。
それはマティーナの家からも確認できた。煙草を吸いながら、クスリと笑う。横でノーテも「おぉ」と言いながら見とれている。
「綺麗やなぁ。なぁ、マティーナ、あれお前が作ったん!?」
「あぁ。そんな感じだ。」
「ひゃー、凄いなぁ。あれで、その疫病治んの?」
「あぁ。そんな感じだ。」
「おい、お前さっきから「あぁ。そんな感じだ。」しか言(ゆ)ってないやん!」
煙草を灰皿にこすり付けて、ため息をつく。
「ツッコミは俺にするな。お前の友達にしろ。……帰らなくて良いのか?あの女の子たちは、お前が起きるまでにこの騒動を終わらすそうだが?」
「だぁ、寝とかなあかんな。ほな、帰るわ。」
「二度と帰って来るなよー。」
「無表情でそんなこと言わんといてや。妙に腹立つわ。ってか……また会えるかも分からんけどな。」
苦笑いしながらノーテは扉に手をかける。マティーナはそんな表情を見て、言った。
「お前、魔女とか倒しに行ったりするのか?」
「どぅわ!鋭ッ。」
「分かるんだよ。何年付き合ってきたと思ってんだ。20年だろ?大体顔で分かるんだ。また、会えるかどうかか。そんなもん、運命次第だ。」
「はっ?運命?」
ノーテは首を傾げる。マティーナはコクリと頷き、彼に近づいた。
「運命ってな、遠くて重くてって大変な感じだろ?でもな、あれな意外とちっぽけでな人間でも掴めちゃったりするんだよ。死ぬ運命だったら生きる運命に変えればいい。そんなこと容易いことだよ。」
マティーナはポンッとノーテの肩を叩く。
「ありがとう。ほな、運命変えてきますわ。」
扉を開け、外に出て行く。あっと言う間にノーテは闇夜へと消えていった。その後姿をずっと見続ける兄、マティーナ。まだずっとノーテの後姿を見ているような気がする。
扉を閉めて、椅子に座り、本をまた読む。窓をふと見るともう空の半分がオレンジ色で青空が見えている。太陽も山から出てきて朝を告げようとする。だが、ここの満月はなくならない。太陽と一緒にならんでこの街を眺めるのだ。
「……朝か。時が経つのは早いな。」
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「たっだいまぁー!!」
宿のドアを荒々しく開けるアリス。主人は苦笑いしながら「おかえりなさいませ」と一礼。パーチェも無事に帰ってき、これで今回の事件は一件落着である。
アリスたちの部屋は2階で、階段を上がって扉を開けると……爆睡(の真似)をしているノーテ。
「やったぁー……!ミッション成功だよ、皆っ……!」
「はい……!私たちだけで、何とかできました……!」
「まぁ、当然っしょっ……!」
パーチェ、アリス、ロッタでハイタッチ。でもスプリングはノーテの前で苦笑いしながらその3人を見つめていた。
その後でノーテも苦笑いしながら、鼾を掻くのだった。
Episode6「金の粉/殺人ウィルス」END