ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 僕らの彗星 【参照500突破!感謝感激雨嵐】 ( No.152 )
- 日時: 2011/04/22 20:26
- 名前: 月夜の救世主 ◆WABCAFs6Hg (ID: rs/hD2VF)
- 参照: 巡音ルカは雰囲気的にライトニングに似てると思わないか?
それは随分前の悲しいお話である。
そこはとても平和な村で、森が近くて、自然に満ち溢れた村だった。森とはいえ魔物は住んでいたのだが、優しい魔物で一緒に生活していた家もあった。そんな温かい村に、一人の少女が住んでいた。
村の広場で、木にもたれかかって数を数えている。他の少年少女たちはわーっと村に散って物影に身を潜めた。ある子供はツボの中。ある子供は勝手に民家の中に入ったり。
「もういいかーい?」
声をかけた。でも、返事は返ってこない。それはお約束である。声を出してしまえばばれてしまうからだ。少女は勝手にいいんだなと決め、他の子供達を捜しに言った。
まず最初に、木の後で一人を見つけて、次に民家の後ろで見つけた。見つかった子供達は悔しそうに苦笑いをしながら、少女に着いて行く。さらに、つぼの中に居るところを発見し、倉庫の下、そして最後に民家の中。あっという間にかくれんぼは終わってしまった。
「わーっ、スプリングちゃん凄いねー!見つけるのとっても早い!」
「ありがとう!」
スプリングと呼ばれた一人の少女は、この話の主な人物だ。彼女はとってもかくれんぼが得意で、最高で5分で全員を見つけたかくれんぼ(鬼)のエキスパートである。周りの皆は彼女を尊敬し、彼女が鬼になった時は、「終わったな」と諦める人も多い。
「はいっ、じゃあスプリング以外でじゃんけんなー!」
「じゃーんけーん……ぽいっ!」
鬼はクセ毛が特徴の少年、センゼに決まった。センゼは「おーっし!」と気合いを入れながらおでこを木にくっつけた。
「数えるぞー!」
その一言で、わーっとまた子供達は散っていく。スプリングは森に近い茂みに隠れた。広場から「しー、ごー……」と聞こえる。クスッと笑いながら茂みからセンゼを見つめる。
「うっし。どこだ?」
次々と他の友達が見つかっていく中、スプリングは最後まで残った。隠れるのも得意な彼女。かくれんぼで勝てるものはいないだろうと村の子供たちから知られている。
(そっちじゃないよー、こっち、こっち!)
センゼが全く逆のほうを行っている。笑いを堪えながら、スプリングは目でセンゼを追いかける。すると、森からガサッと音がする。スプリングは後を振り向くと--------------
「キャッ!!!」
大型の猫の魔物がスプリングに襲い掛かったのだ。その悲鳴を聞いたセンゼたちはスプリングの元へと駆けつけた。
「ス、スプリング!!おい、何しやがんだ!!」
魔物は大きな目玉でセンゼをギロリと睨みつけた。足がすくんで、尻餅をつく。そして魔物は長く鋭い爪でスプリングに止めを刺そうとしたその時!
魔物が爆発して、一欠けらも残さず消えていたのだ。その爆発音は周りの村人達にも聞こえて茂みに皆、注目する。センゼは足を震わせて、スプリングを見つめる。
「お、お前--------------一体……!」
「え……?」
「わ、わぁぁぁぁ!!お化けだ、お化けだー!!」
センゼや他の子供達は一目散に逃げていった。スプリングは何が起こったかわからなかった。目の前にいた魔物が何故消えている、どうしてセンゼは自分のことをお化けだと言った?そして何故逃げた?全部が全部彼女には分からなかったのだ。
翌日の朝。ベットから降りて、いつもの通り食卓に向かう。いつもならそこに食べ物があるのだが-------------
「ねぇ、お母さん?お父さん?」
食べ物と両親が居ない。スプリングは家に一人ぼっち。家中探しても居ない。すると、椅子の下に一枚の紙が落ちていた。その内容は----------
『あなたを産んだ覚えはありません。』
小さな心にグサッと刺さる、大剣のような刃物。純粋な心はバキバキに砕けてしまう。紙を机に置いて、トボトボと外へ出てみれば-----------
「やい、化け物!!人間に化けやがって!」
「死んじゃえ!消えろ!」
「村から出て行け!私たちを食べるつもりなのね!?」
硬い石が、スプリングの体中を打撃する。スプリングは小声で「痛い、痛い……」と訴えた。だが、石は絶え間なく飛んでくる。それが、一週間も続いたのだ。家には誰も居なくて、外に出れば友達が自分を苛めてくる。他の村人は、彼女に救いの手を差し伸べようともせず、冷たい目で睨んでくる。
ヒソヒソ聞こえてくる、心無い言葉。
「ざまあみなさい、悪い魔物。」
「早く出て行けば良いのに。」
「はぁ。しぶといわね。」
それは石の痛みなんかよりずっと痛かった。石と声が聞こえないぐらい遠い所まで逃げてきたスプリング。
どうして?
私は何も知らない------------
どうして皆は私を苛めるの------------?
私は何もしてないじゃない!
その悲しい心は、村を破壊した。彼女が大泣きして、泣き止んだ頃には、村は前の平和な姿を無くしていた。燃える炎、重なる瓦礫、血だらけの村人と友達。
自分が殺してしまったという罪悪感が小さな子供を縛った。
トボトボと、村から出て行く道を独りで歩く。
その後は、地獄のような景色。だが、彼女は振り向こうともせず、淡々と歩いた。そして心で呟いたのだ。
さようなら、私たちの村----------------------
さようなら、皆-----------------
-----------------ごめんね