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- Re: 僕らの彗星 【返信200突破!感謝感激雨あられでもいいわ!】 ( No.235 )
- 日時: 2011/05/29 20:36
- 名前: 月夜の救世主 ◆WABCAFs6Hg (ID: n/BgqmGu)
- 参照: ペンタブやっと購入しましたよーっ!!
彼は死んだはずだった。
彼は長く永きすぎて、過去のことを忘れてしまった。
きっといい過去だった---------そう思っていた。
彼は100年程前に生まれた。生まれつき能力持ちだったが、冷静で無口な彼は人前では自らの能力を晒すことはなかった。
それに人柄もよかった。
無口でミステリアスだったが、友達も多く、人気だった。
大人になった彼は職業を選んだ。
その職業は「奇術師」。子供の頃に見た、奇術に惚れ込んで、ずっとなろうと思っていたのだ。みんなが居ないうちに、色々と自分の能力を強化し、奇術が出来るまでに至ったのだ。今の自分になら絶対になれると確信し、早速なった。
最初はそんなに人気がなかったが、彼の人柄により人は集まるようになったのだ。ある日、彼の友人が訪ねてきた。
「久しぶりだな、エルメス!」
「-----------あぁ。」
「お前お仕事してるのか。話そうと思ったのにな。」
「……もうすぐで終わるから、まっててくれ。」
ショーが終わって、近くの喫茶店へと入った。友人は奇術師になった自分の友人を誇りに思ってくれた。
「お前すげぇーな!奇術師って。」
「……すごいとはまだ言い難いヒヨッコ奇術師だがな。」
「いっやいやいや。すごいよ。お前、自分の実力であんな技できるんだろ?」
「-------------まあな……。」
嘘をついた。
何故って?嘘をつくしかなかったからだ。
エルメスが住む、国は「能力者=悪魔」とされていたのだ。
その昔、良き能力者が人々を苦しめる悪魔を退治していた。
だが、ある日悪魔は言った。
「貴様はなんのために我らを甚振る」
「人々のためだ!お前たち忌まわしき悪魔共め!」
「吐かせ!人も悪魔も一緒だ。七つの罪を持ちし人間だが、我ら悪魔は罪を一つしか持たぬ。一つの七つ。さてどれが大きいかな?」
それが彼を変えた言葉だったのだ。
人々を七つの罪を持つ悪魔と誤認識し、次々に虐殺した。
というような話が受け継がれていった。
能力を持ちし者は処刑されるという形で数は減っていったのだ。
エルメスはその性格で隠し通していたが、こうなるといつ殺されるかわからなかった。
「最近は嘘ついて奇術師になってやがるヤツもいるからなぁ。」
「----------哀れだな。」
何を言っているんだ自分は。
一番哀れなのは……自分じゃないのか?
嘘ついて、その性格で偽の顔を大事な親友に嘘を……。
運命は近づく--------------
ある日の休日、比較的人通りが少ない道へ隠れて、ショーの練習をした。
すると奥でパリンというような音が彼の耳をくすぐった。
後ろを見ると、そこには------------友人が。
手に持つ、牛乳の瓶を落としていた。信じられないというような顔で、呆然と立ち尽くしている。
「エルメス……お前、能力持ちだったのかよ。」
「………。」
黙るしかなかった。
すると友人は黙ってやるよなんて気持ちもサラサラなく大声で叫んだ。
「能力者(あくま)だああああああ!!処刑だああああああ!!」
「えっ……?」
能力持ちを見つけた人が処刑するシステムだった。エルメスは城へ連れていかれ、処刑台に立たされた。今回の処罰はかなり重いものだった。
「嘘をつき、かなりの生涯を生き抜いた……。「切腹10斬」の刑だ!」
裁判官の声が鳴り響いた。
すると奥から友人が剣を振り回し、エルメスに向けたのだ。
「-------------友だと思ったのだが。」
「友だろうが、能力持ちは悪魔。だまって死んでろや。」
「くそッ……。」
エルメスは目をそらし、悔しそうな顔をする。
剣を振り上げ、腹へと入っていく。ぞわぞわとかき分け、背中へと貫通した。
最後に見たのは……
-------------友人の悪意に満ちた顔。
次に目を覚ましたときには、冷たい土に挟まれていた場所だった。上へ上へとかき分けて、外の空気を吸う。自分は死んだのでは?まずはそう思った。-----------だが、生きている。
「生き返った……?」
のではない。
人間としてではなく……
増悪も持って死んだ者、「アンデット」として-----------