ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 僕らの彗星 【返信200突破!感謝感激雨あられでもいいわ!】 ( No.237 )
- 日時: 2011/06/01 20:48
- 名前: 月夜の救世主 ◆WABCAFs6Hg (ID: n/BgqmGu)
- 参照: あぁー、梅雨ですねぇ。
いつ頃だっただろうか。
彼が初めて「掃除」というものを知ったのは。
とある小さな村に、『オズパーダ掃除屋』というものがあった。そこに任せればどんな隅にある散一つも綺麗さっぱり掃除してしまうのだ。壁も床も真っ白になって帰ってくる。そんな几帳面なそうじ屋はいつも商売繁盛していた。
それがまず、表の顔。
もう一つの顔は、社会の掃除をする暗殺屋としても有名だった。夜な夜な厳つい顔をして黒ずくめの男や女がそのそうじ屋へと入っていく。だが他の住人は、「きっと掃除を依頼しに来たんだろう」と到底暗殺屋とは思ってもいなかった。
一度狙った奴は逃さず、暗殺してくる。証拠も一緒に掃除してくるのだ。そんな二つの顔を持つ掃除屋に……
一人息子ができた。
名を「エルキ」とつけた。
すくすくと元気に育ち、3歳で箒を持たせてもらった。まずは普通に掃除を朝、昼、晩とするのが基本中の基本。大分慣れてきたら、簡単な掃除の依頼を引き受ける。
勿論まだ不慣れで、親のように綺麗さっぱり散を掃除することはできなかったが客は喜んでくれた。
だが、親は「ちゃんと取らなかったら、お小遣い100円ずつ減らすよ〜」と決まりをつけたのでエルキはかなり頑張った。
やっと出来たと思っても実はまだまだ残っていたり……その詰めが甘いところが彼の短所。冷静にどういう方法で掃除するか、そこをちゃんと決められたりできるのが長所。
そんな正確に親は困った。
そう。エルキに「暗殺屋」を継いでもらうことにしていたのだ。だが、証拠を残してしまったら……と思うと、とても怖かった。息子の身の危険も心配なので、継ぐことはやめようと決めた。
----------だが、エルキは言った。
「いいよ、絶対証拠を残さないでいけるよ。もう、子供じゃないんだしさ。」
14歳になったエルキも、ちゃんと冷静になったか。
一応安心ということにした親は、早速「殺し」を教えた。
かなりの腕前で、掃除と同じように簡単な依頼は難なくこなした。中級ぐらいの依頼もこなせるようになって、心配ないと思った親はエルキに武器をもたせた。
「重いぞ〜。」
「……ただの箒じゃないのか?」
「いやいや。この中には、剣が入ってる。普通のよりも重く出来ている。移動の際は少し難しいが、徹底的に暗殺できる。」
「そうか。じゃ、これを使って早速やってくるよ。」
エルキは家を出て、近くの山で暗殺者を待った。だが、正直武器なんていらなかった。向こうから人がやってくる。恐らく標的だろうと手をバキバキならして、向かうが……
「よう、エルキ!」
と、気軽に声をかけられた。
標的と想いたくなかったやつが標的だった。
彼の親友だった。
家も近所で、とても優しい男「シドン」と変な名前だった。
だが、困っている者がいればすっと手を差し伸べてやれる男だった。
「……よう。」
「こんな時間でナニシテル?」
「さ、散歩だ。」
「そっか。散歩ね。この時間の散歩は気持ちいいからな。」
シドンはこっちへやってくる。
手を震わし、目をつむった。
「ゆ、許せ-----------!」
手をシドンの胸につき当て、能力を発動した。
彼の能力は人間を支える精神を破壊する、「汚れなき穢れ」。
シドンはだんだん力をなくして、倒れてしまう。目も生きたような目ではない。
拳を握り締め、倒れる親友を見つめた。
「----------------なん……で……だ?」
体中にひんやりと冷たい空気が走った。そして彼の涙腺を破壊する。
「すまん……すまん……!!」
こうするしかなかった。
謝る他に何をすればいいのだと。
実際破壊したのは……
彼の心だったのではないのか------------?