ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- おとしもの。 ( No.1 )
- 日時: 2011/02/21 19:34
- 名前: 黒猫 ◆YtFiiqjbeo (ID: Gz/gGLCR)
「————ぁ、?」
気が付けば傘が消えていた。だから僕は駆けだした。何処に落としてきたのだろう。気づけば自分が消えていた。此処は何処だ、僕は誰だ。
気が付けば僕の代わりに君が居た。当たり前のような顔をしないでよ、ねえそこは僕の居場所だよ、とらないでよ僕の居場所を。ねえ、当たり前のような顔をして本当にいいと思ってる? いますぐその髪を引き抜いてあげようか? ねえ、本当に退いてくれないかな。僕の居場所を盗るなら君を殺しても良いんだよ、ねえ、ほら退いてくれない?
「—————ここはわたしのいばしょだもん」
にこりと君は笑うけれど僕の心の中はまっ黒くろすけなの、ほら、起こる前に退いてよ、ねえ。ちょっと聞いてる? 退いて退いて退いて退いて退いて。ねえ、僕の場所を盗らないでよ、当たり前のような顔をしないで。その綺麗な顔をゆがめたい、こわしたい。
「違うよ、其処は僕の居場所だよ」
「落ちてたんだもん」
落し物じゃないもん、僕は少し傘を取りに出かけてただけなんだもん、ねえだから退いてよ。欲しいなら飴でも何でもあげるさ。ねえ、ほら、消えてください。ねえ。ねえ。恋人だから良いって問題じゃないんだよ、ねえ、ねえったらぁ!
「 其処まで言うなら消してあげるよ 」
「 ばいばい 」
ばきゅーん。僕の手にある銃が彼女の全てを奪っていく。僕はただ冷めた目でそれを見ていた。
「 折角居場所を護っててあげたのに 」
彼女のその言葉に一瞬だけ目を見開いたけど、関係ないと言い聞かせて僕は思うがままに引き金をもう一度だけ強く引いた。今度こそ彼女は倒れていく。すろーもーしょん? ちがう、綺麗にきれいに見えた。すろーもーしょんになんて見えなかった。だけど、僕はなぜか笑いが止まらなかった。
( 嗚呼、僕は何時の間にか様々な感情さえも落としていたらしい )