ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 僕等は非日常に恋をする ( No.1 )
日時: 2011/02/22 10:03
名前: 千臥 ◆g3Ntw.kZAQ (ID: 4fZ9Hn2K)

Prologue...

AM.7:00
鳴り響く目覚まし時計も
母親の作った美味しそうな朝食の匂いも
父親がコーヒーを啜(スス)りつつ捲る新聞の音も
星座占いのBGMも

いつもと何も変わらず
しかし、変わらないことが嫌だというわけでもない。
むしろこの何も変わらない“日常”が少年は好きだった。

「この日常から脱却したい!!」

なんて友人は言っていたが、少年はそうは思わない。
日常からの脱却、つまり奇奇怪怪な非日常を体験しにいくということ。
自らこの幸せな日常を捨ててそんな危なげな橋を渡りたいだなんて、理解しかねる。
ここまで読めば、少年がどんな人間なのか少しは理解できただろう。
一言で言えば、冷めてしまっているのだ。
十六歳、高校二年生……
一生の中で最も楽しいと言われている高校生活。
悪に憧れる年頃でもあるし、いつも違うことが体験したいと思うのも普通であると言える。
しかし少年にはそういう考えがなかった。
この日常が、普通が、平凡が、愛しい。
そんなまるで中年のような、もしくは老年のような考えを持っていた。

そんな日常を愛する少年の住む地域で
あるものが流行りだした。

“都市伝説”

それは、近代あるいは現代に広がったとみられる口承の一種で、
原点はオルレアンの噂、
1969年、フランスのオルレアン地方で「ブティックに入った女性が次々と行方不明になる」というものだ。
行方不明となった女性は臓器売買に使われる、四肢を切断され見世物にされる、など様々だった。
有名なものなら
人面犬や口裂け女、首なしライダーなどが挙げられる。

もちろん流行に敏感な高校生の間でも都市伝説は瞬く間に広がっていった。
少年の友人も例外ではなく、
毎日毎日ネタを仕入れてきては、聞いてるか聞いてないか分からない少年に延々と話し続けていた。

ふと、鼓動が速まるのを少年は感じた。
口では「馬鹿らしい。ガキか」なんて言っていたが、
内心……わくわくしていたのかもしれない。
己が嫌う、非日常に
少年が心を惹かれた、そんな瞬間だった。



僕 等 は 非 日 常 に 恋 を す る