ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 僕等は非日常に恋をする ( No.4 )
日時: 2011/02/24 13:20
名前: 千臥 ◆g3Ntw.kZAQ (ID: 4fZ9Hn2K)

act.02 【始まりは僕等の好奇心から[ⅱ]】

本日の授業の終わりを知らせるチャイムが鳴る。
「今日は何処行く?」
「あ、服買いに行かない? あそこの店、セールやってんだって」
そんなクラスメートの会話を耳に流しながら、千歳は昼休みに聞いたあの話を思い出していた。

“人を襲う切り裂き魔”

真偽が気になった千歳は、先程教師に尋ねたのだ。
「竹中が入院してるってホントですか?」と。
教師は頷いた。
「あぁ。竹中は総合病院に入院している」と、そう言って。
伊月の話は本当だったのだ。
正直疑い半分だった千歳は都市伝説が実在することに多少驚いていた。
だが、その事実を知ったところで何か行動を起こそうとは思わない。
竹中とも特別親しいわけでもないし、
ましてや攻撃性のある相手に、自らの命を張ってまで立ち向かおうとも思わない。
こんな自分を周りは薄情だと、言うだろうか。
いや、誰も言わない。
よく知らない相手の為に命を張ろうだなんて……
そんなことが出来るのは漫画やドラマの中の人間だけだ。
現実の人間は
自分が可愛くて、愛しくて仕方ない。
「伊月ならここで、犯人見つけて竹中を安心させてやろうぜ……なんて言うだろうな」
アイツはまるで漫画の主人公みたいな奴だから。
自分のことより相手を優先させるお人好しだから。
「残念ながら、俺はアイツみたいに人の為に行動出来るお利口さんではないからな」
そんなことを呟いて、千歳は帰路を一人歩いた。

   *

夕方五時。
日没の時間は多少遅くはなったが、既に空は茜色から紺色へと変わり始めていた。
「あー……。のんびり歩いてたら遅くなっちまった」
早く帰ろう、そう歩みを速めようとした時だった。
何かが、
自分の横を通り過ぎていった。
尋常ではない速さで、風のように。
「……え、何」
千歳の数メートル前で止まった“それ”は

「貴方の血が見たいの……」

そう言ったのだ。
これではまるで、伊月の話していた都市伝説そっくりじゃないか。
千歳が唖然としている間にそれは消えていった。
全身の血の気が引くのを感じる。
背を額を冷たい汗が流れていく。
この感情は、そう……

とてつもない“恐怖”

恐怖を全身に感じた千歳は、近くにある奴の家へと走った。
息も切れ切れのまま奴の家のインターホンを押す。
「はーい、どちら様ですか……って千歳!? どうしたんだよお前」
玄関前で息を切らしている千歳に伊月は慌てて駆け寄った。

「……伊月。俺、見ちまった……。“アレ”を」
千歳は顔を上げずに呟いた。
「アレって?」

「人を襲う都市伝説“切り裂き魔”」



始 ま り は 僕 等 の 好 奇 心 か ら
(俺は恐怖という感情を今、初めて理解した)



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RYUKI様
コメントありがとうございました!!
かなりの亀更新になりそうですが、
頑張らせていただきます^^