ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 僕等は非日常に恋をする act.04更新 ( No.9 )
- 日時: 2011/03/14 09:26
- 名前: 千臥 ◆g3Ntw.kZAQ (ID: QiHeJRe.)
act.05 【紅き花の想いとは[ⅲ]】
「あれ聞いた? あの残虐事件の話。ヤバイよねー……」
「うんうん。人の原型留めてなかったって。てか、切り裂き魔の仕業だって噂されてるよね」
千歳の通う高校でも昨日起こった事件の話で持ちきりだった。
既に“切り裂き魔”の仕業としても噂されている。
「ねぇねぇ!! 千歳も知ってるでしょ? あの事件の噂」
「あぁ……」
「酷いよねー。てか怖くない!? あの事件現場、千歳の家の近くでしょ?」
クラスメートとのそんな会話も昨日の記憶を蘇らせる原因としかならない。
消えない赤が再び千歳を襲った。
「っ……悪い。授業休むって言っといてくれ」
「えっ、千歳!? ちょっと、どうしたの!?」
自分を引き止める声も無視して千歳は教室を後にした。
*
「……はぁ。早く忘れて調子戻さねぇと。あれは俺に関係ないんだ……」
屋上の扉を開け、外へ出れば冷たい風が髪を揺らした。
気分を紛らわすために此処へ来たのは正解だった。
「そういえば、伊月の奴今日見てないな……」
休みかもしれない。
あんなものを見てしまえば気分が滅入っても仕方がないだろう。
「見舞いでも、いくか……」
そんなことを考えているうちに、どうやら眠りについてしまっていたようだ。
気付いた時には空は茜色に染まっていた。
「うわ……。一日サボっちまったのかよ」
風に当たっていたおかげか、
ゆっくりと眠れたおかげか、
頭の中は少しながらクリアになっていた。
屋上の階段を駆け下り、教師に見つからないよう学校を後にした。
あの惨劇のあった場所を通って帰る気もしないため、少々遠回りにはなるが大通りを選んで伊月の家へと足を進める。
言葉を交わしながら歩く少女達、
帰路を急ぐサラリーマン、
絶え間なく走る車達。
こうしていれば、あの日の出来事なんてなかったように感じる。
「犯人は捕まらず、手がかりすらも薄い。あれだけ堂々とした犯行なのにな」
犯人が捕まらないのは、その犯人が存在すらも確かでない“都市伝説”だからか。
伊月の家へ着いた頃には、茜色の空は薄暗くなりつつあった。
インターホンを押せば、しばらくしてから彼の母親の声が聞こえてきた。
『どちら様?』
「千歳です。久我千歳」
小走りの足音に続いて、玄関の戸が開けられた。
「千歳君!! 伊月に会いに来てくれたのかしら?」
「あ、はい。アイツ……大丈夫ですか?」
そう尋ねれば、母親の南は表情を曇らせた。
「なんか、気分が優れないって言って……部屋から出てこないのよ」
そして南は心配そうに伊月の部屋の戸を叩いた。
「伊月? 千歳君、来てくれたわよ」
中から小さな物音が聞こえると、控えめな声で「入って」と。
南は少しホッとしたように微笑んで、リビングへと戻っていった。
部屋の中は薄暗く、どうやらカーテンも開けられていないようだ。
伊月の精神状態が悪いことは、手に取るように分かった。
「大丈夫かよ、お前」
そう聞けば、いつもは見せないような薄い笑顔とどう聞いても大丈夫には思えない声が返ってきた。
「千歳も具合良くないんだろ? 顔色、最悪」
「お前に言われたくねぇよ。衰弱しきってんじゃねぇか」
少し笑った伊月に安堵の溜息を零した。
紅 き 花 の 想 い と は
(主人公気質の友人は弱り気味。これも全て“あれ”のせい)
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RYUKI様
ありがとうございます!!
コメント、すごく励みになってます^^
風様
なんて嬉しいお言葉!! 自分にはもったいなさ過ぎるッ…
描写が丁寧だとぉ!? そんなことないッスよ!!
ホントありがとうございます^^