ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 悪魔の遊園地 ( No.19 )
- 日時: 2011/03/07 20:56
- 名前: @yuna (ID: qyuIaVem)
(9) 昔〜1年前〜 <<後編>>
席替えをして5日がたった。いつもと変わらぬ教室。「○○と○○が付き合った」とかそんなニュースは無いのだろうか。この教室にいる生徒の半分近くがそう感じていた。
担任「えー、昨日は数学無いと言ったが、実はあったので数学の教科書どっかから借りて来いよー。」
理佐「先生!無責任すぎます!」
担任「しょうがない。数学担当の鈴木先生がなぜか今日復活したからさ。しょうがないしょうがない!」
生徒が騒ぎ出す。『数学なんていやーー!』と。
「キーンコーンカーンコーン」
昼休みのチャイムがなる。みんな立ってお弁当を取り始めた。
皐月「美加!一緒に食べよう☆」
美加「ごっめん!今日は悠君と食べるんだぁ♪」
皐月「そ、そうか。悠君って、あのA組の?」
美加「そうそう!同じアイドルグループが好きでさ、今度一緒にコンサート行くから、そのために一緒に食べよう♪って言われたからね!」
皐月「そっか。じゃぁ心!」
心 「私も無理!今日は彼氏と食べる約束してるの!ごめんね!」
皐月「そうか、ごめん。」
皐月(みんな約束があるんだ。今日は1人だけど、我慢我慢!)
お弁当箱を開き、から揚げを口にする。いつも自分で作っているお弁当。今日のは上出来だった。いつもなら、美加が『皐月のお弁当おいしそぉう!』と言って勝手におかずを取る。『あー!』といつも言っているが、内心はうれしかった。 が、今日は1人なのだ。
蓮 「それ、おいしそうだね。」
皐月「え?」
話しかけてきたのは蓮だった。蓮は自分のお弁当を手にして皐月のお弁当の近くに置いた。
蓮 「ほら見て?全然見た目が違うでしょ?」
皐月は2つのお弁当を見比べた。皐月のお弁当は、すべてが整っていておいしそう。蓮のお弁当は、ぐっちゃぐちゃ。卵焼きもすごい形になっているし、スパゲッティはお弁当箱にすばらしいほど散らかっていた。
皐月「全然違う!」
そういうと、皐月は笑い出した。
蓮 「でしょ?今日は母さんいなくてさ、自分で作ったらこんなのに…。」
皐月「スパゲッティとか自分で作ったの?」
蓮 「違うよ。卵焼き以外冷凍食品の詰め合わせ。」
皐月「卵焼きは自分で作ったんだ。たまに焦げてたり、焼けてなかったり。」
蓮 「俺料理下手なんだ(汗)」
話は盛り上がった。蓮が皐月と同じ洋楽好きな事もわかったし、高校では同じ軽音部に入りたい事もわかった。明日手作りでお弁当を作ってもってきて相手(皐月→蓮・蓮→皐月)に食べてもらう企画も考えた。両方別々の場所で食べて、帰ってきたら感想を言い合うのだ。
皐月はこの企画がうれしかった。ただでさえ今日一緒にお弁当が食べれたというのに、明日は相手のお弁当まで食べれるのは。皐月は今回のお弁当は恥をかかないようにすると決めた。
〜夜〜
皐月「う〜ん…。蓮君何喜ぶかな?テリヤキチキンは難しいし…やっぱり定番の卵焼き?」
1人言を言いながらパソコンを見つめる。
皐月「翔太に聞いてみるか。」
皐月は携帯で翔太にメールを送った。翔太は蓮と1番仲がいいので、きっと蓮の好みもわかるだろう。と思ったのだ。
すぐに返事はやってきた。
『from:翔太
うーん…。蓮はこんにゃく好きだぞ。後な、鮭とハンバーグ。ちなみに豆腐も好きだぞ。』
本文にはそう書いてあった。
皐月「こんにゃく、鮭、ハンバーグ、豆腐。ねぇ〜。」
パソコンのキーボードの音が部屋に響く。皐月はメモを取り出し、メニューを書いた。
『こんにゃくの味噌煮・豆腐ハンバーグ・卵焼き・鮭おにぎり』
皐月「こんにゃくの味噌煮は作り方知ってるし、卵焼きも知ってる。鮭おにぎりの鮭は、鮭フレーク使って…。わからないのは豆腐ハンバーグだけか。味付けとかわからないしなー。」
さっそく翔太にメールを送った。
またすぐに返事が返ってきた。
『from:翔太
蓮は塩味が好きだ。焼き鳥も塩だし、天ぷらも塩だぞ。』
皐月「塩かー。」
しばらく皐月の計画が続いた。やっと眠りについたのは…夜中の2時だった。
〜学校〜
朝は6時に起きてお弁当を作った。完璧に寝不足。また授業で寝てしまうかもしれない。皐月はそう思って、あらかじめ蓮に頼んでおいた。
授業はいつもより早く進み、昼休みの時間になった。
美加「皐月〜!お弁当食べよう!」
皐月「うん!どこで食べる?」
美加「久々に屋上は?」
皐月「いいね!じゃぁ、先に行っててくれる?」
美加「OK♪」
皐月は蓮にお弁当を渡した。
皐月「一生懸命作ったんだから、ちゃんと食べてね?」
蓮 「ありがとう。はい、俺の作ったお弁当。」
皐月「サンキュ!」
皐月は蓮からお弁当を受け取って、屋上へ走った。美加は皐月に向かって手を振る。皐月はダッシュで美加の所まで行った。
美加「来たねぇ。あれ?そのお弁当箱…。折原君のじゃない?」
皐月「え?あ、そうそう。蓮君とお弁当交換したんだ。」
美加「そっか。食べよ食べよ!」
皐月はお弁当を開いた。中には小さな紙切れも一緒に入っていた。
皐月「何これ」
紙切れには、『ずっと前から好きでした』と書いてあった。お弁当はキレイに整っていて、一生懸命作りましたオーラが沢山出ていた。
皐月は小さく笑い、お弁当をたいらげた。
2人で教室に戻ると、蓮がお弁当を食べ終わって待っていた。
蓮 「皐月ちゃん、おいしかったよ。良く俺の好きな物わかったね。」
皐月「私、天才だから。」
蓮 「そっか。料理の天才だもんね。」
皐月「余計だな…。」
蓮 「でさ、紙切れ、見た?」
皐月「見たよ。どうせドッキリでしょ?」
蓮 「本当だよ。中2の頃からずっと。」
皐月「本当に?」
皐月は席に座り、紙切れに文字を書いて渡した。そこには…
『私もです』と書いてあった。