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Re: ヴェルデュキア戦記 第一編開始 ( No.6 )
日時: 2011/02/27 19:06
名前: Ley ◆SAvQ/U.Sqg (ID: BL8fZ.Pl)



「貴様等退け、あの莫迦は私が退治する。」
野次馬の群集を手で退けながら、やけに背の高い男が間に入ってくる。
大剣を携えた女の目と同じで、怯む気配が感じられない。
しかし背の高い男の顔は厳しそうな面持ちで、尚且つヴァルキュリア王国の上級兵士が着こなす青いコートを纏っている。

「……ロイ・サヴィリティ・ギルヘム大佐…ッ!」
ロイ・サヴィリティ・ギルヘム大佐。
ヴァルキュリア王国の軍隊『ヴァルキュリア第一騎士団』の大佐である。
知名度もヴァルキュリア王国を飛びぬけ、ギルヘム大佐は各国でも話題になっている。
何故話題になっているか…それはギルヘム大佐の統率力と、戦闘力だ。
何万人の兵士を率いる統率力と、刹那で魔物を討伐する戦闘力が他国でも高く評価された。
そしてヴァルキュリア王国を代表する男になっている…ということだ。

「お前…… ロイ・サヴィリティ・ギルヘム…!」
金髪の女は驚く様に言うと、大剣を眼下に下げた。

「フレンダか。 貴様、生きていたのだな。」
ロイは男性特有の低い声を唸らせながら、金髪の女—————————フレンダを厳しく睨んだ。
ヴァルキュリアの兵士達は今だフレンダに剣を向けたままでおり、ロイはその中で一際目立っている。
何故なら手には大きな『槍』が持たれているからだ。
そんじょそこ等の槍とは比べようにならない大きさであり、1m80cm程もある。
フレンダはロイが持っている槍に視線を移すと、ロイはまた男性特有の低い声で
「この槍はベルセルクの槍と言ってな…… 自身の魔力の分だけ威力が増す槍だ……」
「黙れっ! ち、近寄るなぁ!」
ロイの声を大きくフレンダは遮り、尚反撃の手を緩めない。

「やめろ!」
ライが場の空気を一喝するかの様に、大きな声を出した。
そして腰のベルトにつけられていた銃を前に突き出し…弾丸を放った。
鋼でコーティングされた弾丸は空気抵抗を無視して前へと進む。

「ベルセルクの槍よ… 我から不穏を取り消したまえ!」
ロイがそう怒鳴ると、放たれた弾丸が刹那、真っ二つとなって地面に落ちた。
弾丸が地面に落ちる音さえも虚しく、ロイは不敵な笑みを浮かべている。

「な……!  チィッ! フレンダ、早くこっちだ来い!」
ライは銃を今だ構え、フレンダに呼びかけた。
フレンダは金髪をなびかせながら、兵士と野次馬の群集を駆け抜けるとライの場所にへと走る。

「こっちだ! 早く!」
ライが喋る言葉もますます早口になってゆく。
そしてフレンダがライの元に着くと、ライはフレンダの手を優しく握って走り出した。

永遠の逃亡劇はこうして幕を開ける。